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小泉進次郎「コメ担当」大臣は自民党の救世主になるか?

8〜12分

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小泉進次郎「コメ担当」大臣が各メディアに出演し「(農水族のドンである)森山氏の信任を得て改革を行っている」と盛んに宣伝している。

TBSの夕方のニュースにおいて井上貴博キャスターは興奮を隠せない様子で改革の旗手としての小泉進次郎氏に期待を寄せていた。井上氏だけでなく、小泉進次郎「コメ担当大臣」は既得権益との戦いを通じて新世代のスターになると感じた人も多いのではないか。

別のエントリーで触れたように石破総理が押し切ったとされる備蓄米放出はJA全農の受動的抵抗を受けていた可能性がある。田崎史郎氏は今回の件で盛んに江藤拓農水大臣が備蓄米放出を英断したと言っているがそれは嘘であると喧伝している。しかし石破総理が農水族の抵抗を押し切って備蓄米の放出を決めても現場はそれに従わなかった可能性があるのだ。

40代の井上貴博キャスターは興奮気味に改革の旗手である小泉進次郎氏に期待を寄せていたようだが、星浩氏はユニークな視点から状況を懸念している。古古米が安く売られる一方で高いブランド米と並ぶのではないかというのである。

ではなぜこれが問題になるのか?

井上アナの視点は「自民党のリーダーシップのなさには呆れ果てるが野党にも期待できない」という人々の視点を代表している。時事通信の最新の世論調査では内閣支持率が20.9%を記録した。消費税減税を求める人が7割に達している。しかし野党中心の政権交代を望む人は21.4%しかいない。有権者は野党にも期待していない。

森山幹事長は農水族のドンでもあるが安易な消費税減税に反対する財政規律派でもある。江藤拓農水大臣はおそらく森山氏の推挙を受けており「森山氏の失点」である。選択肢は旧石破グループの齋藤健氏と小泉進次郎氏の二択だったようだが石破派が農林水産行政を握る怖さもあった。農水大臣経験がある齋藤健氏よりも「失敗する可能性がある」小泉氏の方が(農水族にとっては)ベターなチョイスと言えるだろう。

小泉進次郎氏もこれがわかっているため、メディアで盛んに「森山氏の支持がある」と喧伝している。森山氏はこれまでコメの輸入に項前と反対するなどして石破総理に反抗してきたが、メディアを使って釘を差しておけば動きにくくなる。

ここで小泉進次郎氏が米価対策に成功してしまうと国民は一気に「農協改革論」に傾きかねない。農水族は「警戒が必要だ」と考えるはずである。だが表立って攻撃できないため「受動攻撃」を強めるはずだ。

ここでコメの話に戻る。JA全農長野はマスコミを呼び備蓄米の放出を宣伝した。しかしこのときに「国内産ブレンド米」とブランド米を分けている。星浩氏の懸念はおそらくこのあたりを受けているのではないか。

コメなんか安ければ安いほうがいいではないかという人はおそらくコメを常食していない人だろう。自分でコメを買っている人は「安いコメにしておこう」と考えるかもしれないが、家族から文句を言われかねない主婦などはいきなり5kgの古米を買うのに躊躇するはずである。家族から文句を言われかねない。

事情はスーパーマーケットも同じである。近所のスーパーでカリフォルニア米が展示されていた。価格は安かったが結局この米が二度と置かれることはなかった。スーパー側もクレームを恐れて派手に宣伝せず、なおかつ「保守的」な消費者も手を出さなかったのではないか。レジ打ちの店員たちは「小分けにして売ればいいのに」と囁いていた。

確かに小泉進次郎「コメ担当」大臣のありがたいご指導でコメの平均価格は下がるかもしれない。しかしコメを常食している保守的な消費者は「不味そうな(とはいえ買って食べたわけではない)」コメが安くなっただけでお目当てのブランド米の価格が下がらないと文句を言うかもしれない。

さらに「安いコメ=まずいコメ」という印象がつけばスーパーマーケットは徐々に備蓄米を仕入れなくなるはずだ。

テレビ東京が面白い番組を出していた。マクロの経済指標がじわじわと悪化しているそうだ。マスメディア批判を展開せず淡々と足元も状況悪化を伝える姿勢には迫力もある。中に「必要なものを削っている人がいる」という指摘が入っている。

つまり、たかだかコメの値段が下がったとしてもおそらく消費者の困窮状況は改善しないだろうということがわかる。トランプ関税の影響が出始めているうえに、国民をそっちのけにした保身のための抵抗勢力による受動闘争まで始まれば、一体何のために政治なのかがますますわからなくなってしまいそうである。

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