各地で県知事選と市長選挙が行われた。ネット保守に狙われた宮城県では和田政宗氏が現職に肉薄したが、その他の市長選挙は投票率が低調で現職が勝利するという両極端な展開になっている。「雨天の影響で投票率が低下した」というニュースもあり天気が良ければあるいは違う結果になったのかもしれないと感じる。
昨日気散じに書いた立憲民主党の内紛の観察記事と合わせると、有権者は今の政治に漠然とした不満は持っているものの、自発的に問題解決に結びつけようという気持ちはなく、誰かに煽られなければ政治に参加しないという独特の政治風土が生まれているものと分析できる。
これが時として極端な結果を生み出し地方政治を中心に混乱が広がりかねない状況が生まれているといえるだろう。
26日には、宮城県、川崎市、長野市、神戸市で首長選挙が行われた。川崎、長野、神戸はほとんどの政党が相乗りして現職を支援しており投票率は低調だった。兵庫県知事選挙で大きく混乱した神戸市で無難な選挙が行われたのは少し以外だ。川崎市でも排外主義的な候補者が立ったようだが支持を得られなかった。
Quoraへの投稿によると排外主義的な主張が嫌われたため、新聞では主張がそのまま報道されなかったそうだ。その「新聞」はリベラル色が強い神奈川新聞で「レイシスト」と候補を名指ししている。
◆おことわり 川崎市長選に立候補している宮部龍彦氏については、経歴や出馬に当たっての主張に著しい差別的言動があり、差別が拡散する恐れがあるため、異なる扱いとしております。
川崎市長選挙に立候補の宮部龍彦氏、差別扇動最後まで 演説に市民ら抗議(カナロコ)
しかし宮部氏は大きな支持を集めることはできず現職が当選している。
現職有利な選挙が多いなか、例外となったのが宮城県知事選挙だ。
ネット保守の強い支持を受けていた参議院議員の和田政宗氏は先の参議院選挙で「自民党のリベラル化」の煽りを受けて落選した。そこで参政党とタッグを組み宮城県知事選挙に挑戦した。争点は多選の是非と外国人優遇問題だったようだ。
宮城県では水道の民営化(みやぎ型管理運営方式)を推進している。受注企業の中にヴェオリアグループという外資が入ったことでネットを中心に「重要な公共インフラを外国に売り渡すのか?」という批判が広がっていた。さらに一部では土葬対応の墓地について「イスラムにへつらっている」という批判があったそうだ。
河北新報、日経新聞、FNNなどの記事を総合すると、この外国人排斥の動きは都市部(仙台市)の若年層を中心に支持を集めたようだ。結果的に和田候補と村井候補の票差は約16000票弱とかなりの肉薄ぶりをみせている。
和田候補の出身地は東京都だそうだがNHKのアナウンサーとしての最終任地が仙台だったようだ。
特にFNNの出口調査を見ると若者の間に排外主義的な(若者視点から見ると日本第一主義の)メッセージが強く浸透していることがわかる。雨天で投票率が低かったという話もでているため「晴れていれば結果が違っていた可能性もあるのだろう」と思う。
と、ここまで分析すると若者が特殊な政治環境に置かれているのだと分析したくなる。
しかしながら前回の立憲民主党に関する分析結果も似たようなものだった。
中高年有権者は分配に不満を感じているがそれを正面から主張できないために、まずは「安倍総理が憲法を蔑ろにしている」と考えて安倍政権を批判したというものだった。しかし「違憲状態」で作られた法律が違憲な活動を行うことはなく経済的な実害も出なかった。
しかし芯の部分にある不満は変わらない。そこで矛先が「政治とカネ」を隠蔽する自民党には誠意がないと攻撃の向かう先が変わっている。そしてこの政治とカネの問題は実際に世論を動かし自民党は少数与党に転落した。
つまり憲法や清潔な政治という「大義」がなければ日本人は権利主張ができないということ。若者の間ではそれが自民族中心主義に入れ替わっているだけと言える。若者は政治は清潔であるべきという大義が理解できず、中高年はなぜそれほどまでに「日本人」にこだわりがあるのかがよくわからない。
つまり、今の政治の分配構造に不満があるが正面から権利主張できないために代理攻撃先として「大義のある何かを選ぶ」という点においては中高年も若年層にも大きな違いはないということになる。
ただし有権者は自分たちが声を上げることはなく、誰かが代わりに騒いでくれるのをまっている。誰も騒がなければ選挙には関心を向けないため、投票率は概ね低調になってしまうのである。
