大分県大分市で大規模火災があり170棟以上が焼け少なくとも1名がなくなったそうだ。厳密には大分市の外れにある佐賀関という地域で2005年までは独立した街だった。佐賀関は関アジ・関サバでも知られておりたいそう賑わっているのではないかと思っていたのだが8割の住宅が空き家だったそうだ。住民たちは「地震や火事があると大変なことになるからなんとかしてくれ」と訴えていたそうである。
佐賀関は海上交通の要衝であり周囲を山に囲まれた銅の精錬所として栄えていた。港が近く煙害も周囲に広がらないからである。しかしながら土地が限られていたため製錬所は町の外に住宅を探すように求めていた。さらに国外で安い銅が作られるようになり収益が悪化。今では都市鉱山(つまりリサイクル)などに力を入れている。
街は豊予海峡で取れるサバやアジを丁寧に手釣りし「関サバ・関アジ」としてブランド化していた。しかしこれも近年は漁獲量が減少していたという。温暖化の影響で漁場が移ったのか、あるいは資源を取りすぎたのかはよくわかっていないようだ。これに追い打ちをかけたのが燃料費の高騰と漁師の高齢化だ。
日本テレビは被災地域の8割が空き家だったと書いている。これが直接火災の原因になったのかは不明だが少なくとも消防車が入るのには苦労をしたようである。火災は3日経っても鎮火していないなどと伝わっていた。
高齢化が災害を呼び寄せた事例としてすぐさま思い浮かぶのがクマ被害である。高齢化のために猟師が減っており里山のイノシシやシカなどが増えているようだ。本来なら獲ったシカは猟師が捌かなければならないそうだが、自身も猟師である俳優の東出昌大氏は法令違反が暗黙の了解になっていたと主張している。悪意でやっていると言うよりは体力がないため法令に沿って狩りをすることができない。
また、地域の過疎化で柿の木の収穫も難しくなっているそうだ。山形県では未収獲の果実を放置するなと呼び掛けている。上山市は「それでも収穫できないならトタンなどを巻いてクマが登れないようにしてくれ」と呼びかけているようだ。
能登半島沖地震では「そもそも過疎化しているため復興しても住んでくれる人がいないのではないか」と話題になっていた。
これまではこうした問題が起きると「地域の復旧のために国が全力を尽くすべきだ」と書いてまとめることで、なんとなく問題を片付けたような空気感を出してキモチよく文章を締めることができていたわけだが、このような事例が日本各地で起きるとそろそろ現実を直視するべき時期に来ているのかもしれないと感じる。
いくら力強い日本だ、災害に強い強靭化だなどと言ってみても目の前にある衰退から目をそらすことはできそうにない。
経済産業省は予算獲得に血眼になっており地方の過疎化を恫喝の道具に使い予算を獲得しようとしている。つまり地方の過疎化は彼らにとっては予算獲得のための武器にすぎない。
このままでは76兆円の国富が失われるから積極的な財政出動をすべきだと言っているが、過疎化が進んだ場合には地域住民が助け合って勝手に何とかすべきだとも提言している。
小売店や医療・介護事業者などの撤退で生活環境が悪化し、人口流出に拍車が掛かれば、地域のサプライチェーン(供給網)全体に悪影響を与える可能性がある。有識者会議では、過疎地域などを念頭に、住民主体の非営利組織を新たなサービスの担い手に位置付ける方向で検討する。
40年度の実質GDP76兆円減 過疎地のサービス供給不足で―経産省試算(時事通信)
