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城内実大臣の答弁に不安 高市総理主導の賃上げは実現するのか

8〜12分

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高い支持率でスターとした高市政権。これが定着するかは賃上げが実現できるかにかかっている。高市総理のプラン自体は好意的に評価されているのだが、具体的な政策には疑問も残る。早速城内実大臣が答弁に失敗しスポーツ紙にいじられている。高市総理のマイクロマネージメントぶりが裏目に出た形である。

高市総理の支持率が高い理由は国民の負担増なく経済成長を通じた豊かさを実現してくれると漠然と信じられているからである。世論調査を見ると国民はアメリカの安上がりなセーフティネットが維持できるなら(防衛増税がないことを前提に)国防費がGDP2%になっても構わないと考えている。

REUTERSは岸田・石破政権と高市政権では考え方に大きな違いがあるとしている。経済成長なき賃上げなど実現するはずもないのだからこれはこれで結構なことという気がする。

高市早苗首相が政府の賃上げ政策の方向性を前政権から転換している。最低賃金の目標値を明示しないなど企業側の立場を重視していると見る野党側から疑問の声が上がる一方、高市氏は「賃上げができる環境の整備」を優先する考えを強調し続けている。岸田文雄、石破茂両政権からのパラダイムシフトの大きなポイントは、経済成長を目指す「起点」が異なることだ。

マクロスコープ:高市氏、賃上げ「丸投げしない」 前政権とのパラダイムシフト鮮明に(REUTERS)

しかしながら高市総理の考え方は大臣にはうまく伝わっていなかったようである。城内実大臣の答弁が立ち往生したとスポーツ紙(デイリー)が書いている。

背景にあるのが高市総理大臣のマイクロマネージメントぶりである。大きな戦略を共有するのではなく細かすぎる指示書を渡している。城内実氏はこれがきちんと理解できていなかったようである。結果的に高市総理大臣が答弁に立ちその場を収拾した。

REUTERSの記事にも書かれているように、政府主導の経済成長を通じて「企業丸投げ」の懸念を払拭しようとしている点には好感が持てる。しかし賃上げ環境整備担当大臣さえその内容を理解していないのにそれを企業に伝えることができるのかという点には不安が残る。

その後「労働環境」にテーマが移って答弁が続いた後に、高市首相が最後に「企業に丸投げとの声も各地で聞いた。だから賃上げできる環境を作ろうと」と言って、振り向いて城内大臣を指をさした。「あそこにいる、賃上げ環境整備担当大臣!先ほど少し答弁でしくじったかもしれませんが担当大臣に指示しました」と述べ、爆笑が起こった。

【高市自民】ネット騒然「しくじり大臣w」「ダメだこりゃ」「この答弁は酷い」予算委、共産小池氏に詰められ大臣グダグダ蒼白→委員長が答弁交代を命じる事態 高市首相がイジり爆笑に「ヤバい」「この大臣大丈夫か」「政権のアキレス腱」

高市総理は答弁の中で「地方交付金による補助金や、コーポレートガバナンスコードの見直し」などを挙げている。本来ならば、経済成長、地方交付金、コーポレートガバナンス強化がどうやって賃上げにつながるのかを聞くべきだったが、底まで話がいかないうちに迷走答弁で時間切れとなってしまっている。

日本が経済成長しなければ実質賃金が上昇しないというのは当たり前の話だが今までの政権はこれを避けていた。これがREUTERSが主張するパラダイムシフトだ。しかしながらそもそも経済成長プランが出てくるのは2026年夏でありその後どのくらいの時間で成果が出るかがわからない。さらに現在提案されているプランで俎上に乗っている産業の「裾野」の広さはよくわからない。

次に地方交付税の補助金だが「重点支援地方交付金の拡充を通じて賃上げの流れを全国に広げる」とされているだけでこれも内容が曖昧だ。物価高対策としておこめ券などを配るという政策も一時的補助金は家計に蓄積され額面の25%程度の効果しかないという試算がある。企業に補助金をばらまいてもそれがどの程度の成果を上げるのかは内容を見てみないとよくわからない。

さらにコーポレートガバナンスは金融庁が主導して行っている投資環境透明化の一環であり高市政権の政策ではない。仮に成果を上げたとしても上場企業の一部有能な人材への投資を加速するだけでおそらく地方の中小企業への波及効果はないだろう。

本来はこれらの問題点を議論してもらいたいところなのだが、そもそもおそらく制度設計はこれから。何も知らされていない大臣が曖昧な答弁で野党に吊し上げられるだけで終わってしまっている。