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国民の不満は削除できるが経済不信は削除できない中国政府

5〜7分

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今回の高市総理の国会答弁をきっかけとした台湾議論において改めて中国経済がいかに危険な状態にあるかを認識した人は多いだろう。そんな中国で今SNSの書き込みが削除されている。

中国経済は改革開放の当初から土地取引という爆弾を抱え込んでいた。そもそも土地の所有ができないはずの中国経済は一時30%が不動産取引に依存していたともいわれている。しかし2008年のリーマン・ショックをきっかけに問題が顕在化し現在も地方政府の借金問題が片付いていない。

中国は日本が30年に渡って経験した「日本化」に加え少子高齢化という問題を抱え込んだ。このため経済が極めて厳しいデフレ状態に置かれている。トランプ関税の影響を受け製造業が不調だったがその波が非製造業に波及しつつある。このため中国にとっては対米関係の回復は喫緊の課題だ。

トランプ関税の影響が即座に経済に影響を与えたのだから中国経済は内需拡大に転換する必要があることは明らかだ。このため中央政府は住宅市場の支援を行うことにした。モルガン・スタンレーによると必要な額は9兆円という途方もない金額になりそうだ。

同時に政府はSNSなどで広がる不動産悲観論の取り締まりを始めている。取り締まりと言ってもやることは極めて簡単で単にプロバイダーに命じて削除させているそうだ。

CACの上海支局は11月14日以降、住宅局やインターネット警察とともに取り締まりを開始し、インスタグラム風の「レッドノート」や動画共有プラットフォーム「ビリビリ」を含む交流サイト(SNS)上で4万件以上の投稿を削除した。また7万件以上の不動産関連アカウントと1200件のライブ配信ルームも処罰した。

中国の検閲当局、不動産市場の「悲観論」投稿取り締まり(REUTERS)

中国にとってSNS言論の削除は極めて簡単な問題の解決手段だろう。しかしながら投稿を削除したからと言って国民の不満が消えるわけではなく、ましてや地方政府が抱えている借金が消えてなくなるわけでもない。

中国は戦略的互恵関係を利用してプラスサムゲームを作りたいという欲求と外に敵を作って不満を外にそらしたいとする欲求を持っていた。

今回の高市総理の軽率な国会答弁は結果的に中国に「高市総理を敵にする」戦略を選ばせた。

戦略的思考を持たず「戦艦と言ったのは間違いではない!」と主張し続けるくらい頑固な高市総理は中国の不満を解消することはできないのだから、我々は中国の事情を理解しつつ扇情的な発言に対処してゆく必要があるといえるだろう。

と同時に中国国内の矛盾はかなり「危ない」レベルに上昇しつつある。テールリスクとは言え「もしも」の備えも怠るべきではないということなのかもしれない。

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