令和の米騒動は意外な展開を見せている。国民の願いは米価の安定だが政治家は全く関心を示していない。そればかりかこの騒動を利用していかに自分の田んぼに水を引き込むのかに夢中になっている。
しかし、この騒動は結果的に危ういバランスの上に立っている日本の農政を崩壊させるかもしれない。
そもそも日本の農協はかなり「ヤバい」状況にある。
コメの話題について調べていて「農協」「JA全農」「農林中央金庫」の違いを曖昧に書いてきたと気がついた。
まず日本には農業協同組合がある。山下一仁氏は農協は戦時統制団体である農業会の残滓でありGHQが解体を目指し果たせなかったと書いている。ただし、GHQは結果的に農協を通じて自作農家した農民をまとめ上げ反共プロパガンダの浸透に利用した。農協には統治上のメリットもあったのだ。
この農協の経済部門がJA全農だそうだ。農産物の買い取りや資材の販売などで収益を得ている。
こうした構造は霞が関が虎ノ門に外郭団体を作ったりNHKが株式会社を立ち上げて受信料で作った公営財産であるはずの知財を使ったビジネスを行うのに似ている。
しかしながら農業従事者が減少し、近年ではビジネスで収益があげられなくなっているのだそうだ。
多くの農協は、組合員から農産物を買い取って販売したり、逆に組合員に対して農業関連の資材を販売したりする事業では十分な利益が上げられず、農林中金からの還元が、収益の大きな柱になっています。
巨額含み損の農林中金 その背景を検証へ(NHK)
このNHKの記事は農林中金が多額の損出を出していると伝えている。2025年2月の記事では農中の赤字は1兆9000億円まで膨れ上がっているそうである。本業で儲けられなくなると投資にプレッシャーが掛かることになり結果的に投資に失敗した。
農協はそもそも農業系ビジネスでは収益があげられなくなっており、最近では農林中金からの配当金に頼っていた。日本国家は成熟した債権国から債権取り崩し国に移行しつつあるが、農協はすでに債権取り崩し状態にあった。しかしながら農林中金の赤字転落により配当金が支払われなくなり、農協の人件費だけが高騰するという試算が出ている。
ダイヤモンド・オンラインは「農協の半分が赤字になる」という組合長の懸念が現実味帯びる、衝撃の試算結果!」としている。
今回のエントリーではまず石破総理がコメの価格や流通にさほど関心を寄せず長年の持論である農協改革に突き進もうとしていると書いた。そのために起用したのが同じような考え方を持っている小泉進次郎氏である。どちらも発信力はあるが省庁をどれだけ使いこなせるかが不安視される人物だ。
この二人がコメの価格高騰で高まるJA全農・農林水産省批判の機運を利用して準備がないままで「改革」に突き進めばおそらくその抵抗もかなり強いものになるだろう。現在の農協はかなり危ういバランスの上にかろうじて立っている状態でいつ何をきっかけにして倒れてもさほど不思議はない。このあたりが郵政改革との大きな違いかもしれない。
つまり、石破・小泉両氏がコメの価格を下げられないというのはまだベターシナリオであり、中途半端な改革によって日本の農政を破壊してしまうワーストシナリオが存在するということになる。
