このエントリーでは今後、イラン・アメリカ合衆国、イスラエルがどうなるかを分析する。
分析は、これまで・今・これからの三本立てになっている。このエントリーはこれからを扱う。
BBCはより強権的な体制が成立する可能性を指摘しているが、それは比較的安定的なシナリオに属すると言わざるを得ない。
イランには明確な民族的多数派が存在せず、同一民族内の結束も弱い。さらに、帝制から宗教権威主義体制へと移行した結果、官僚機構と宗教権威が癒着している。この構造が外部から破壊された後に内側から再建することは困難である。
ハメネイ師は宗教的には殉教者として象徴化されるだろう。イランの国営テレビは涙ながらに殉教者の死を悼んだ。
ハメネイ師の死去を受け、集団指導体制に移行したとされるが、高齢であったことから後継問題は以前から想定されていた。現在、パキスタンやイラクなど周辺国では抗議運動も拡大している。
- Iran forms interim leadership council as President Pezeshkian resurfaces(ABC News)
- アングル:ハメネイ師後継、現実派ラリジャニ氏が有力か 臨時指導部設置(REUTERS)
- パキスタンやイラクで抗議活動、イラン最高指導者の訃報に カラチで9人死亡(REUTERS)
イランの軍事能力については不透明な部分が多い。濃縮ウランの所在も確認されていない。仮に回収を試みる場合、地上部隊の投入が必要となり、大きな犠牲が生じる可能性が高い。
イランの北にはロシアの勢力圏が広がり、東側にはタリバン勢力がいる。現在アフガニスタンがタリバンに占拠されておりパキスタンがアフガニスタンに攻撃を仕掛けている。なおパキスタンは核兵器保有国である。つまり外国からの武器の移入を阻止も監視もできない地域だ。
イランが無力化されれば、ネタニヤフ首相にとっては政治的勝利となる。一方で、地域の混乱はイスラエルにとって二次的問題にとどまる。それはアメリカ合衆国が処理すべき、文字通り対岸の火事である。
アメリカ合衆国、とりわけトランプ大統領は困難な立場に置かれる。議会への事前説明は限定的であり、今後議会協力を得ることは容易ではない。
戦闘が長期化し、石油価格が上昇すれば、アメリカ国内の反発は複数の経路から強まる。すでにMAGAには介入疲れが見られる。経済への影響、犠牲者の増加、金融市場の不安定化が重なれば、支持基盤はさらに弱体化する可能性がある。作戦が長期化すればするほどトランプ政権には大きなダメージとなるだろうが、ネタニヤフ首相にとってはこれも他人事。すでにアメリカ軍には3名の死者が出ている。
従来、アメリカは中東作戦に際して欧州諸国を巻き込んできた。しかし今回は関係悪化が進んでおり、積極的協力は期待しにくい。Axiosは今回の軍事作戦を「ギャンブル」と表現しておりヨーロッパとの間に積極的な関係を取り結んだ形跡はないとしている。
トランプ政権はヨーロッパを敵視する発言を繰り返し、グリーンランドには領土的野心までちらつかせていた。ルビオ国務長官はバンス副大統領よりは融和的な姿勢で臨んだが、それでもかなり疑問の多い歴史観を披瀝していた。結果的にイギリスは今回の攻撃においてイギリスの基地の使用を認めなかった。
湾岸諸国についても、表面的な理解はあっても、軍事的支援に踏み込む可能性は低い。自国防衛を優先する姿勢が強まっている。共同通信はサウジアラビアがイラン攻撃を容認したと伝えているが、実情は「止めても無駄だろう」と考えて放置した可能性が高い。代わりにアメリカ合衆国との間に自国に有利になる原子力協定を結んでいる。またサウジアラビアも基地の使用を認めなかった。巻き添えになることを恐れているのだ。
結果として、イラン情勢の後始末を引き受ける責任は、主にアメリカ合衆国に集中することになる。今回の介入も大統領の判断によるものであり、その政治的責任は最終的にトランプ大統領自身が負うことになる。

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