新型コロナ禍のさなか「中国がアメリカにバイオテロを仕掛けている」という陰謀論があった。誰もが眉唾物の陰謀論だと考えていたが実際にラスベガスの民家でバイオラボが見つかった。このラボは中国人が中国銀行の資金援助を受けて作られたと見られるカリフォルニア州リードリーのラボとほとんど同じだったことがわかっている。にも関わらずトランプ大統領は中国政府を声高に批判しておらず本心では中国とうまくやってゆきたいと考えているようだ。高市政権は今後トランプ大統領のデコードに失敗するものと考えられるがその構造がよく分かる一件と言えるだろう。
ラスベガスの民家で無許可のバイオラボが見つかった。この家に出入りした人が重篤な状態に陥っており、周囲には昆虫の死骸が散乱していたことからかなり危険な状態だったとわかる。
- Bio lab found in Las Vegas is similar to scene discovered in California, raising questions from officials(CBS)
- Housecleaner said multiple illnesses tied to Las Vegas house with possible bio lab: Police report(ABC News)
- 1,000 samples sent for testing after possible biological lab found inside Las Vegas home: FBI(ABC News)
このラボはカリフォルニア州リードリーのバイオラボと似た施設構成。運営者は中国国籍のジャ・ベイ・ジュ容疑者。2023年に逮捕されており現在裁判を待っている。また今回逮捕されていたオリ・ソロモン容疑者は不動産管理者で危険物の不法廃棄の疑いで逮捕された。
カリフォルニア州や地元当局は、連邦政府が協力的でなかったことを批判している。またリードリーで事件が起きてからも連邦政府が有機的に連絡を取り事件を未然に防ごうとした形跡は見られない。
トランプ氏は新型コロナ禍について、中国の関与を示唆する発言を繰り返してきたが、その多くは明確な証拠に基づくものではなかった。また近年では、移民がアメリカ合衆国の治安を深刻に悪化させていると強調しているが、その主張と統計データとの間には乖離が指摘されている。
さらに、移民の一斉捜索が民主党支持の強い地域で集中的に行われている点から、これらの施策が治安対策という側面だけでなく、「民主党地域=危険」「共和党地域=安全」という印象を形成する政治的意図を伴っている可能性は否定できない。こうした点を踏まえると、これらの政策や発言には、選挙を意識した政治的計算が強く働いていると考えられる。
トランプ氏は極端な主張を繰り返すことで、「中国のバイオテロ説は眉唾ではないか」という印象を社会に広めた面がある。その結果、正当な安全保障上の懸念までが陰謀論と混同されやすくなった。さらに、具体的なバイオラボの存在が明らかになった後も、連邦政府として十分に統合された組織的対応が継続的に行われてきたとは言い難い。
トランプ大統領が選挙戦略や支持基盤の維持に強い関心を示す一方で、日常的な行政府運営には必ずしも十分な注意を払ってこなかった。さらに、行政府の縦割り構造や組織士気の低下が進んできた結果として、こうしたタイプの大統領が選出されやすくなったと捉えられる。
その意味では、行政府運営で目に見える成果を出しにくい状況が続くほど、政治が「物語」への依存を強め、単純で分かりやすい言説に魅了される支持者が増えていくという構造が見て取れる。
ニュースは「起きていること」を伝える一方、同時に「起きていないこと」を知ることも重要だ。事象の背後にある構造やパターンを理解することで、表面的な出来事を超えた全体像が見えてくる。
例えば、トランプ大統領が「ベネズエラからの薬物が治安を大きく損なっている」として軍事的圧力や介入の正当化を図った。その主張と実際の薬物流通経路との関係については、専門家や調査機関が異なる見解を示している。すなわち、薬物の多くがベネズエラから直接持ち込まれているという主張にはさほど信憑性がなく、選挙キャンペーンであった可能性が否定できない。
同様に、今回のバイオラボ問題を契機にトランプ大統領が直接的に中国を批判する発言を強めたという報道はなくSNS投稿も確認されていないようだ。このことから、「本音として中国と関係改善を図りたい」という見立てや、「批判は交渉戦略の一部にすぎない」という読み方も強く成り立つ。
実際、複数の報道によれば、トランプ大統領と習近平国家主席は直接の電話で地域情勢や経済・安全保障を巡る意見交換を行っており、米中間の対話が完全に断絶しているわけではない。
高市総理は3月20日に訪米を予定しており「日本の立場」をトランプ大統領に伝えて協力を仰ぐことにしている。時事通信によればトランプ大統領も高市総理を全面的に支援するとしている。通常、選挙前に相手国の特定の政治勢力に対して明確な支持表明を行うことは、外交慣例として慎重に扱われることが多いが、現状維持を好み日米同盟はこれからも盤石なのだと考えたい人たちはこれを変わらぬ日本重視の証と考えるだろう。つまり高市総理と自民党に有利な展開になるものと予想できる。
しかしながら、トランプ大統領の過去の発言は一貫して利得(=ビジネスディール)に基づいている。つまり異例の厚遇にはそれなりのプライスタグ(=値札)が付いていると考えたほうがいい。
溺れるものは藁をも掴むという。
一部でアメリカは国際法を重視しておらず大国間のディールに耽溺しているとも指摘されている。トランプ大統領が習近平国家主席との直接的な関係を重視しているにも関わらず、盤石な日米同盟というぼろぼろになった物語に耽溺する日本はかなり高い代償を支払うことになるだろう。

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