トランプ大統領は大統領退任後のセカンドキャリア構築に向けて動き出した。それが平和評議会(the Board of Peace)議長という椅子だ。その一環としてロシアを引き入れようとしておりウィトコフ特使がプーチン大統領を訪問する。一方でグリーンランドを巡る問題はヨーロッパの激しい反発を招いており、ダボス会議での演説は事実上のパックス・アメリカーナ終了宣言となった。
トランプ大統領のダボス会議での演説はいつものようにとりとめのないものだったようだ。グリーンランドとアイスランドの取り違いも見られた上にイギリスの北海石油開発も批判している。ただしグリーンランドに武力は用いないと宣言したことでニューヨークの株式市場は一定の落ち着きを取り戻した。
これを受けてEUのフォン・デア・ライエン議長が「もうEUはアメリカを頼るべきではない」と宣言。カナダのカーニー首相も古い秩序は戻ってこないと主張した。つまり、トランプ大統領の発言は株式市場をある程度安心させはしたが政治的にはパックス・アメリカーナの終わりと受け止められた。
日本のマスコミはこうしたリアクションは伝えられず、高市総理が総選挙で勝利した後の3月20日にアメリカを訪れて日米関係がより強固なものになるだろうという自己催眠的なナラティブが維持している。
一方のアメリカ合衆国もかなり内向きになっており「国際秩序など自分たちの暮らしには関係がない」「実感が持てない」という受け止めが多いようだ。
これを受けてヨーロッパは関税軽減に合わせて取り決められるはずだったアメリカとEUの貿易協定の作業が一時停止された。関税交渉が問題ではなく同盟国の領土的野心が問題視されたのである。
事前に「ヨーロッパが米国債を売れば大変なことになるかもしれないがそんなことはしないはずだ」と主張していたベッセント財務長官は発言を変えて「ヨーロッパが米国債を売っても大したことにはならない」といい始めた。
おそらくトランプ大統領は「米国債を売る可能性」や「地政学リスクを意識した株式市場の崩れ」を側近たちから示唆されてグリーンランド発言を弱化させた可能性がある。ただ、その後は実際にヨーロッパが米国債を売る可能性が高まってきたということなのだろう。
実際に米国債に動揺が走れば「トランプ大統領のせいではない、ほら日本をみてご覧なさい!」といい出しかねない。日本が国際金融市場に説明責任を果たさない中で風評被害が独り歩きしかねないのである。
ではなぜトランプ大統領はグリーンランドにこだわっているのか。おそらく、ヨーロッパの指導者が集まるダボスで「欲しいものは欲しい」と主張したかったのだろう。アメリカ国民の中にはこれをアメリカ的実直さと感じる人もいるのではないか。これが今のアメリカ民主主義の現在地だ。
トランプ大統領は政府ではなくトランプ氏個人が主催する平和評議会(the Board of Peace)で管理したいと考えているようだ。アメリカ合衆国の当局者はトランプ氏が退任後もその椅子に留まることができると主張しているが「将来のアメリカ大統領が指名する」とも言っている。どうやら彼らは個人として評議会に参加し「アメリカ合衆国の代表として政府から委託も受ける」という二重構造を目指しているようだ。そしてその先に10億ドル会員権構想がある。
ホワイトハウスは先週、ルビオ米国務長官、ウィトコフ特使、トランプ氏の娘婿のジャレッド・クシュナー氏を含む執行メンバーを発表したが、米国の代表としてなのか、個人の立場で就任するのかは不明確だった。
冒頭から「パックス・アメリカーナは終わった」と書いている。何を大げさなことを言っているのかと考える人も多いのではないか。しかし実際に平和評議会(the Board of Peace)は国連などの国際機関やアメリカ合衆国といった国家の枠組みを超えて「トランプ大統領が集めた個人」が「お金を」で世界の紛争地を管理すると事実上の私物化構想になっている。
パックス・アメリカーナの終焉どころか国連を中心とした現在の国際秩序を根本から否定している構想が堂々と国際社会で討議されているというわけだ。ヨーロッパはこの構想を拒絶しているが、ロシアのプーチン大統領には招待状が送られたことがわかっている。
これを裏付けるようにウィトコフ特使がモスクワを訪れプーチン大統領と会談をする。
トランプ大統領は国際和平を私物化しようとしているがそれを止めることができるのは国際金融市場の混乱だけである。2025年4月のような大きな騒ぎでもない限りトランプ大統領の暴走を止めることは難しいのではないかという危機感も静かに広がり始めている。

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