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世界の嫌われ者 ネタニヤフ首相が国連演説で退席者多数

6〜9分

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ネタニヤフ首相が国連で演説しパレスチナ国家の樹立は絶対に認めないと宣言した。この演説に前後して国連ビルの前には講義者が殺到。各国の外交団が一斉に立ち去る中でアメリカの代表団だけが必死に拍手を送るという異様な光景が見られた。アメリカ合衆国はガザのリゾート計画のためにイギリスのブレア元首相を抱き込もうとしている。イギリスやフランスが急いでパレスチナ政府を容認したのはこのためだったのかもしれない。

ネタニヤフ首相が国連で演説した。演説に先立って国連本部の前には大勢の抗議者が現れ外交団は一斉に退席し抗議の意思を示した。アメリカ合衆国の代表団だけが盛んに拍手を送っているのが印象的だった。

この映像はBBCなどが紹介しておりイスラエルの孤立ぶりとアメリカ合衆国の滑稽さを世界に発信している。

では、これは単にネタニヤフ首相に対する抗議なのか。どうもそうではないようだ。

むしろ国連と戦後の世界秩序に対する加盟国の苛立ちを示していると考えたほうがいいのかもしれない。世界各国が鋭敏に反応する中、なぜ日本では話題にならなかったのかを含めて興味深い観察対象といえるだろう。

BBCはアメリカ合衆国の新しい構想について紹介している。8月の末にブレア元首相、トランプ大統領の娘婿のクシュナー氏、トランプ大統領が会合を持った。Axiosのスクープだった。

アメリカ合衆国は「ガザに暫定統治機構」を作りそのトップにブレア元首相を充てようとしているようだ。ブレア氏は「パレスチナ人の移動は認められない」としている。

国連は「主権国家」という概念に基づいて作られた組織。世界中にいる民族はそれぞれ自立した政府を持つべきとの理念で運営されている。一方で第二次世界大戦で確定した領土は固定されるべきであるという「力による現状変更は認めない」という理念もある。特に複雑に国境が入り組むヨーロッパにとっては死活問題だが、核兵器保有国に囲まれ敵国条項が残る日本にとっても他人事ではない。日本は自力で対抗ができず有事の際には国際社会の協力が欠かせない。

トランプ大統領はラスベガスのホテル開発のように「土地を手に入れて投資さえ呼び込めば、そこからマネタイズ(金儲け)ができる」と考えているようだ。そのためにはまず有望な土地を手に入れる必要がある。しかしこの考え方は国連が長年追求してきた民族自立と力による現状変更の阻止という考え方とは相容れない。

このことからイギリスやフランスのような国が慌ててパレスチナ政府を承認した理由がわかる。アメリカの提案を阻止するためには対案が必要だが肝心の政府をイギリスやフランスはパレスチナ政府を承認していなかった。これではお話にならない。

このような文脈に当てはめるならば、日本では日米同盟を守るのか、あるいは国連中心主義を守り領土を保全するのかという議論を行うべきだったのだろう。だがそもそもそれは議題にならなかった。日本人はコンセプトベースの政治議論は扱えない。狭い人間関係に基づいて、現状においてどう立ち回れば「得をするか損をするか」という受け身でしか政治を語れないのである。