ある意味で、画期的な世論調査かもしれない。ロイターとイプソスが、「ドナルド・トランプ大統領の高齢化問題」について世論調査を行った。
ドナルド・トランプ大統領の高齢化問題は、これまで「触れにくい話題」として先送りされてきた。支持するか、しないか。その二択の陰に隠れて、議論は意図的に避けられてきたとも言える。しかし、最近の言動を見ていると、もはや「年齢の話」で片づけてよい段階ではない。問題は好き嫌いではない。統治能力そのものが問われる局面に入っている。
ギャラップは、すでに何らかの理由で大統領支持率調査を中止しているが、誰の目にも変化が明らかになってきた、ということなのだろう。
ギャラップは、80年以上続けてきた支持率調査を打ち切った。世論調査はそもそもコストがかかるうえ、トランプ政権下では訴訟リスクも高まっている。また、社会の二極化が進む中で、「平均的な有権者の傾向」に意味がなくなりつつあるのも事実だろう。ギャラップは、単に時代の変化に合わせた結果だとしている。
しかしながら、このところのトランプ大統領の言動は、明らかに不安定さを増しているように見える。これを淡々と言語化し、ログとして残していくことも、報道機関、すなわちジャーナリズムの重要な使命なのかもしれない。
こうした「調査」が行われることで、「これは私の主観ではありません。世論調査の結果を紹介しているだけです」という体裁を取ることができる。
調査結果は興味深い。民主党支持者がそう考えるのは不思議ではないが、共和党支持者の約3割も「加齢によって不安定化が進んでいる」と考えるようになっている。じわじわと「このままでは不安だ」と感じる人が増えていることがうかがえる。
一方で、日本とは異なる事情もある。アメリカでは、政治家はいつまでも若々しくあるべきだという意識がかなり強い。
今回の調査では、連邦議会議員の高齢化も指摘されているが、実際には上院議員の平均年齢は約64歳、下院議員は約58歳に過ぎない。日本であれば「中堅」と評価されても不思議ではない人たちが、「高齢者」扱いされてしまうのである。
ジョー・バイデン大統領が二期目を目指した選挙戦では、この「高齢者は政治家にふさわしくない」という意識が大きな問題となった。大統領候補としてふさわしくないと受け取られかねない言動が増えていったが、スタッフはなかなかそれを本人に指摘できなかった。
結果的に、ABCニュースのインタビューによって反応の衰えが全米にさらされ、その後、選挙戦からの撤退に至った。対応が遅れたため、カマラ・ハリス副大統領は十分に選挙運動を立て直すことができず、結果としてトランプ大統領の再選につながった。
では、今目の前で起きている問題は、本当に「トランプ大統領の高齢化問題」なのだろうか。
調査では、依然として45%が「精神的に明敏で、課題に対処できる」と回答している。一般的には、「トランプ大統領は衰えていない」と解釈できる数字である。
しかしながら、最近のトランプ大統領の言動には、いくつかの明確な特徴が見られる。
- 新しい事例の理解と認識の更新の困難
- 過去の思い込みがアップデートされず、成功体験に固執する傾向がある
- 統合機能の制約
- 複数のスタッフや利害関係者の意見をまとめきれない
- 経済問題と安全保障問題を統合的に扱えず、政策間の整合性が取れない
- 自己制御の困難さ
- 「言ってはいけない」と理解していても、SNSなどで発信してしまう
バイデン大統領とトランプ大統領には質の違いがある。バイデン大統領に衰えを感じた人も、トランプ大統領は「まだ俊敏で、さまざまな問題に対処できている」と感じる人かもしれない。
では、なぜそれでも問題になるのか。
アメリカ合衆国に限らず、大統領制の国家は、時代や環境の変化に対応するため、トップを「演算装置=CPU」として更新する仕組みを持っている。だからこそ、CPUに欠陥があれば、システム全体の暴走につながりかねないというリスクを内包している。
もっとも、アメリカの制度は、もともとCPU交換を前提に設計されているため、ある程度「どんなCPUでも対応できる」柔軟性を備えている。
しかし、トランプ大統領はあまりにも規格外であるため、制度側の「制御装置」が過熱し、やがて停止してしまう――そうした現象が起きつつあるようにも見える。
こうした構造分析を行うためには、その基礎となる「CPUの問題」が、社会的にきちんと語られる必要がある。
その意味で、ロイター・イプソスの調査は、そのための貴重な第一歩になったと言えるだろう。
まだ任期は3年も残っているが、これまで人々が黙して語らなかった問題に対処しなければならない段階にアメリカも入りつつあるということだ。時代は大きく移り変わろうとしている。

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