NATOのルッテ事務総長が「ロシオは5年位内にNATOを攻撃してくるかもしれない」と宣言した。ルッテさんは心配のあまりおかしくなってしまったのか?と思ったがそうでもなさそうだ。2014年から始まった動きはついに「ロシアの脅威」と動的に向かい合う複雑な状況に発展しつつある。つまりロシアの侵略がある世界を折り込み始めたのだ。
NATOのルッテ事務総長が「ロシアは5年位内にNATOに攻め込んでくるかもしれない」との見通しを示した。おそらくロシアとヨーロッパの経済的格差が決定的だった2014年当時にこんな発言をすれば笑いものになっただろう。ロシアがウクライナ侵攻を始めた当時でさえ「ロシアの暴挙には持続可能性がない」と言われていた。
しかしこの発言は昨今のイギリス、ドイツ、フランスの首脳たちの発言と合致している。フランスとドイツでは兵役制度を見直す動きがある。またドイツのメルツ首相もヨーロッパの民主主義はヨーロッパが守らなければならないと主張している。
つまりルッテ事務総長はヨーロッパに対して「状況は変わった」と示す狙いがあると考えるのが自然だ。トランプ政権はNSSにおいて「ヨーロッパは進路を間違えている」と文化戦争を仕掛けているのだからヨーロッパはロシアの脅威だけでなくアメリカの脅威とも向き合わなければならない。
例えばトルコもロシアに対して「部分停戦」を呼びかけている。つまりウクライナを攻撃するのは構わないがエネルギー関連施設などへの攻撃を通じて「悪者になるのは避けてはどうか」と言っているようにも聞こえる。
アメリカ(特にトランプ大統領)が一連の動きをどう考えているのかはよくわからないが、つまりNATOもトルコも「ロシアの攻撃が続く」ことを前提にした戦略に切り替えつつあるということになる。
ではウクライナはどう考えているのだろうか。
主権を放棄するとまでは言わないが、すでに領土奪還は諦めたようだ。
代わりにアメリカ合衆国が入ってドネツク州を「フリーゾーン(自由経済区)」にする案が検討されている。アメリカに見放されるよりも権益を引き渡したほうが得だと考えているのだろう。ザポリージャ原発にもアメリカ合衆国を引き入れようとしているようだ。
つまり、関係国が勝手にウクライナに諦めろと言っているわけではなく、ウクライナも含めて「現在の緊張状態を新しい均衡にする」出口探しが始まった。ゼレンスキー大統領はアメリカのプレゼンスを強く求めているがトランプ大統領はそれには答えないだろう。
なおロシアは「2州の完全支配」を主張し続けている。自分たちの目と鼻の先にアメリカ合衆国が展開してくる悪夢は避けたいと考えているのではないかと思うが、考えてみればこれはロシアの目と鼻の先にある日本に米軍が駐留しているのと似たような状況である。実は日本もその意味では「潜在的なホットゾーン」であると気付かされる。

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