トランプ大統領の性急なウクライナ和平合意が波紋を広げている。プーチン大統領はウィトコフ特使と面会する前に重要な二拠点を占拠したと発表した。ヨーロッパとウクライナの提案を押し返す狙いがあるものと見られる。さらに会談終了後ヨーロッパに対して「ロシアはヨーロッパと戦う用意ができている」と不敵に宣言してみせた。トランプ大統領に強いプレッシャーをかけてきたのだ。
AIで整理するとロシアは強い物語を打ち出しつつもロシアの安全保障のためにウクライナを中立化するという狙いを持っていると整理される。つまりメッセージと実際の落とし所を「理性的に」整理すべきだという。裏返すとそう置かない限り新しい均衡点が計算できないということだが、実際に人間がどこまで理性的なのかをAIが察知することはできない。
少なくとも今回のプーチン大統領の発言はロシアの強い意思を感じさせるものだった。そしてそのためには言葉だけでなく「鉄拳」を振るうというのがロシア流である。
今回の和平合意は何らかの理由で合意を急いだトランプ大統領が素人同然の人々にまとめさせたものとされている。このときの合意内容はロシアは一部の領土を諦める代わりにウクライナの盾になっている鉄道拠点3都市を外交的に取得するというものだった。
しかしながら、プーチン大統領はロシアを訪れているウィトコフ特使と会談をする前に一方的に2つの異なる都市を制圧したと発表した。
ロシア大統領府(クレムリン)のペスコフ報道官は1日、ロシア軍のゲラシモフ参謀総長らが11月30日、ウクライナ東部ドネツク州の要衝ポクロウシクや北東部ハルキウ州のボウチャンスクを制圧したとプーチン大統領に報告したと明らかにした。
ロ軍、ドネツク州要衝制圧か プーチン氏「任務遂行に重要」と評価(REUTERS)
この内ドネツク州のポクロウシクはロシアが割譲を求めていた都市だが、ボウチャンスクは逆にロシアが諦めるとしていた地域の近くにある。つまりもともとの和平合意を「破棄」してみせたのだ。
欧米のメディアは制圧を確認しておらずウクライナも制圧を認めていないためプーチン大統領のブラフである可能性は高い。しかしながらこのブラフにはロシアの軍事リソースという高い代償が伴う。
一方でトランプ大統領がなぜこの時期にウクライナ和平交渉を急いでまとめるように指示したのかはよくわかっていない。エプスタインファイル問題の逆風を封じ込めようとしたという人もいるだろうし、アフォーダビリティ問題から有権者の目をそらそうとしたと考える人もいるだろう。中には「ノーベル平和賞の推薦締め切りが近いからである」と根拠なく呟く人もいるそうだ。
トランプ大統領はガスライティングという手法を使ってアメリカ合衆国の倫理規範を揺らそうとしている。しかしこのときに法的リスクを避けるためにSNSによるほのめかしを行う。つまり極めて「低コスト」な戦略を好む。
ロシアは高い代償を支払ったブラフを仕掛ける一方でアメリア合衆国のコミットメントは限りなく希薄である。
プーチン大統領はウィトコフ特使との会談のあとでヨーロッパに「我々は戦う用意ができている」と不敵に宣言したそうだ。
プーチン大統領は会談に先立ち、欧州との戦争は望んでいないとしながらも、欧州がロシアとの直接的な衝突を望む場合は「戦う準備は整っている」とし、そうなれば欧州は直ちに敗北し、和平交渉を行う相手すら残らないと警告した。
プーチン氏、米特使と和平案巡り会談 欧州に「戦う準備ある」と警告(REUTERS)
AIに言わせればこれも「言っているだけ=ブラフ」なのだろうが、本当にそうなのかと言う強い不安を感じる発言でもある。そもそもロシアが一方的にクリミア半島を併合するまで、誰もプーチン大統領がこんな暴挙に出るなどとは思っていなかったのだ。

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