ロシア・アメリカ・ウクライナの間の交渉で緊迫の度合いが高まっている。記事を書き始めた当初は「ロシア・アメリカ・ウクライナ」の間に落とし所はあるがそれは新しい緊張の始まりであるという記事を書こうとした。ところがロシア大統領府がいきなり「我々はポクロウシクを占領した」と発表した。つまりロシアは単なる待ち状態ではないと強いメッセージを送ってきたのだ。
これまでの状況をおさらいする。
トランプ大統領が感謝祭までにウクライナ交渉をまとめると電撃発表する。しかしロシアの言い分を一方的にまとめたものだったためヨーロッパと共和党・民主党議員団が強く抵抗した。この件で態度が曖昧だったルビオ国務長官はヨーロッパ・議員団・ウクライナの立場に立つことを決めたようだ。
この状況変化を受けてフロリダでアメリカ合衆国とウクライナの話し合いが行われた。話し合いは5時間に及んだそうだが、主に領土問題について話し合い(建設的ではあったものの)結論が出なかったとされている。
ウクライナは領土と引き換えにアメリカの保証を得たいと考えているものと見られる。つまりコストを少なくして支援を得ようという作戦に切り替えつつある。しかしながらウクライナの次期大統領候補と言われるヴァレリー・ザルジニー駐英大使(前ウクライナ軍総司令官)はロシアの狙いはウクライナの併合でありそれはけっして認められないと主張している。
仮に領土を差し出してもロシアが戦争をやめないのであればこの戦争には落とし所がないことになる。つまり利得表が作られない。
そこでいつものようにChatGPTにこれを計算させてみた。結論だけを書くと落とし所は「ウクライナの中立化」だそうだ。
ChatGPTの計算は次のようになる。
まずロシアの狙いには「最大要求を突きつけて最低限の要求を通す」という二層構造が見られるという。つまり鵜呑みにすべきではないという。さらにザルジニー氏の主張はゼレンスキー大統領との違いを強調しヨーロッパの支援を引き出す狙いがあるとしている。
つまり彼らの要求を額面通りに受け取るべきではないというのだ。言い換えると「そう置かないと落とし所がない」ともいえる。改めて利得表を作り直すと、ロシアは一定の成果を得たうえでウクライナの中立化を行うというのが落とし所となる。以前ハドソン研究所の「中国の狙いは日本のフィンランド化だ」と主張している記事を思い出した。
しかしながら、ウクライナの「中立化」は新しい緊張状態を均衡させる効果しかない。つまり将来の戦争の可能性は全く排除されない。またウクライナは不安定な状況に置かれるということになる。またアメリカ合衆国は「民主主義」という不安定要因を抱えているため、ウクライナから完全に離れることはできない。
議論(というか計算)はこのあと「台湾」問題に移り、日本がどのような戦略を取るべきなのかに流れてゆく。この中で独自核武装要求などを計算させてみた。本来はここから「台湾がウクライナ化すればおそらく大変なことになるだろう」と書こうと思っていた。
しかし、ここで全く別のニュースが飛び込んできた。それがロシアによるポクロウシク占領宣言である。時事通信が速報で伝えているが欧米メディアは追従しておらず裏取りの段階にあるようだ。REUTERSはポクロウシクの他にもボウチャンスクを占拠したと伝えている。改めてロシアの要求を見てみると、これまではドネツクは欲しいとしていたがハルキウの領土は返還してもいいと言っていた。外交交渉がうまく行かなかったことで「どっちもロシアがいただきますよ」という意思を示したことになる。当然ウクライナ側はこれを認めていない。
ロシアはドンバス地方の多くを制圧したがこの地域は取り残していた。なおポクロウシクの他にクラマトルスクやスラビャンスクという拠点としがある。この地域はドンバスで採掘された資源を移送するための鉄道拠点などがあり、ドンバスから入ってくるロシア軍を迎え撃つための「盾」のような役割も果たしている。
ロシアに対する盾を失うことはウクライナにとっても大きな問題だがロシアの脅威に怯えるヨーロッパにとっても大きな問題となるだろう。
ChatGPTの分析に従えば「ロシアがウクライナの殲滅を諦めていない」メッセージと捉えるべきではないのかもしれないが、少なくともロシアはこの地域を諦めておらず外交的にとれないのなら力づくでも奪い取ってやるという意思を示したことは重要である。つまりこれは単なる「お話し合い」ではないということだ。
これまでロシアは「ドンバスの盾」を奪い取るために引くに引けないコストを支払っており今更「とれませんでした」とは言えない状況なのだろう。ロシアはアメリカ合衆国との交渉に納得しておらず軍事力を背景にアメリカ合衆国に圧力をかけている。
これがChatGPTのいう新しい均衡なのかと思うと背中が凍るような思いがすると同時に日本はけっしてこのような状況に落ちってはならないと思う。
