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ユングが語った「中年の危機」と劣等機能 そしてトランプ大統領(2/4)

6〜10分

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この「劣等機能」の概念を体系的に提示したのが、スイスの精神科医カール・グスタフ・ユングである。人は社会的に有用な機能を発達させる一方で、「シャドウ」と呼ばれる影の側面も同時に形成していく。そして、人生の転機において、このシャドウが表出し、時に暴走することがある。ユングはこれが精神的不調の一因になると考えた。

しかし同時に、このシャドウの表出こそが「自己と向き合い、さらなる成長へと至る契機になる」として、肯定的にも評価している。

ユングは、このシャドウの表出が起こりやすい時期を「中年の危機」と捉えた。キャリアをある程度築いた人や、子育てを終えた人が、「これでよかったのか」と人生を振り返る時期である。そして、この危機を乗り越え、その人なりの統合された人格へと至るプロセスを「個性化」と呼んだ。

トランプ大統領は人々の欲望によって、この個性化の機会を奪われた可能性がある。

彼は過去に複数回の自己破産を経験しているが、テレビ番組『アプレンティス』によって「有能な企業家」という強固なイメージを与えられた。この過程でトランプという人物の「商品化」に大きく関与したのが、当時『ナショナル・エンクワイアラー』の発行者であったデビッド・ベッカー氏である。裁判において彼は「売れる商品だと思った」と証言しており、その過程で不都合なスキャンダルの買い取り、いわゆる「キャッチ・アンド・キル」が行われていたとされる。

こうしてテレビや雑誌によって「神格化」されたトランプ氏は、その後、SNSや宗教的文脈においても支持を拡大していく。言い換えればアメリカ社会には、「人生の限界を直視せず、幻影の中で生き続ける」ことを選ぶ人々が相当数存在しているということになる。SNSのフィルター技術によって、人は自らの弱さを直視せずに済むようになった。その結果、弱さと向き合うこと自体が「敗北」であるかのような感覚が広がっていく。

こうした環境の中で、ドナルド・J・トランプは「エスタブリッシュメントと戦う救世主」として認識されるようになった。

人々はトランプ氏に期待を投影し続け、それが彼自身の万能感をさらに強化していく。つまり、現在我々が見ているドナルド・J・トランプとは、一個人というよりも「人々の欲望によって形成された巨大な虚像」なのである。

例えば、高市総理も自身の政治的立場を強化するために、ワシントンD.C.においてトランプ大統領を称賛している。これは個別の政治判断であると同時に、「偉大な指導者でありたい」「トランプ大統領を利用して自分の政治家としてのキャリアを完成させたい」という浅はかな欲望が、この巨大な虚像の維持に加担している側面も否定できない。そして高市早苗の浅はかさが日本を経済破綻に追い込んでゆく可能性を直視できていない。

ドナルド・J・トランプは単なる個人としてではなく、人々の欲望を背景にした「一つの現象」として捉える必要がある。

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