ベネズエラ沖で2隻目のタンカーが拿捕された。パマナ船籍のタンカーだった。共和党のランド・ポール議員がこれに反対し「戦争の前兆である(prelude to war)」と言っている。このベネズエラの海域封鎖問題は意外な形で日本の周辺事情に影響を与える。それが台湾海峡封鎖である。
ランド・ポール議員は「自由至上主義・孤立主義」傾向がある。つまりベネズエラへの介入に反対するのは彼の政治的立ち位置からはそれほど不思議ではない。
問題は今回のベネズエラ介入にブレーキがないという点にある。
- トランプ大統領
- エプスタインファイル問題からわかるように、トランプ大統領は火を付けるのは得意だが収めるのは苦手。むしろ「無能力」と言って良い。
- しかし国内問題が行き詰まっており強い敵を内外に必要としている。
- 彼の行動は本能的であり意図が弱い。
- ヘグセス国防長官
- 彼はトランプ大統領の「増幅器」にすぎないためブレーキになり得ない。
- ルビオ国務長官
- ヨーロッパと中国においてはバランス型の実務派
- しかし元々キューバ系なので社会主義体制に敵意を持っておりベネズエラではブレーキになり得ない
- またトランプ大統領にエンドースされないと次期大統領として浮かび上がれないため「ブレーキ機能」が限定的
- マドゥロ大統領
- 無難な調整役として後継者に期待されたただけの人なので実務的解決能力を持たない
- プーチン大統領
- 近年ベネズエラに接近している。
- アメリカがベネズエラと衝突すればウクライナとの二正面になる。つまりベネズエラをけしかけて戦争を始めさせる(支援するとは限らない)動機がある。
トランプ政権は戦争を必要としているが、今のところは「言論内戦」にとどまっている。しかしそれでも一度火をつけた問題を回収できていない。おそらくベネズエラは勝てる相手(だから攻撃してこない)だと思っているのだろうが、そんな保証はないという状態だ。
更にこの問題はすでに台湾海峡問題に暗い影を落としている。アメリカは国内の支持さえ得られていればいいので「麻薬戦争に勝つために必要である」としてベネズエラ海域を一方的に封鎖した。つまり国際的になんら説明責任を果たさずに大国が勝手に海域封鎖を行うという前例を作った。
当然中国も国際世論に説明責任を果たすことなく台湾海峡を勝手に封鎖していいということになる。
日本でベネズエラ問題やベネズエラ問題と台湾の関係が語られず「中国がずるい」「岡田克也が悪い」「朝日新聞のせいだ」ということだけがニュースになるのは、日本人が薄々国際情勢の変化に気がついているからだろう。つまり現実を直視すると不安になるということがわかっているため、あえて語らない道を選択し、高市総理が「強い日本を取り戻してくれるはずだ」と信じたがっているのである。
だからこそ彼らは「誰が悪い」という問題に固執し続けるのだろう。

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