アルジェリアの議会が「謝罪と賠償を求める法案」を可決した。全会一致だったそうだ。フランスとアルジェリアの関係が冷え込んでいることを示すとBBCは伝えているのだがそれだけでは済みそうにない。問題を分析するとフランスという国家が抱える固有の癖が明らかになる。
直接のきっかけになったのはフランスがモロッコの西サハラの領有権を認めたことだそうだ。アルジェリアは西サハラ独立派の最大支援国。しかし、おそらくそれだけではないんだろうな」と思える。
アルジェリアは経済が疲弊しており「外に敵を求める」状態。加えてここに建国の歴史の正当化という別のニーズが付け加えられた。これは経済的に行き詰まりつつある中国が近年になって日本に仕掛けている「歴史戦」キャンペーンと同じ構図である。
もちろんフランスはこの要請に応じることはできない。旧フランス領はこぞってロシアに接近。ロシアは「帝国主義からの解放」というナラティブをこれらの国に持ち込んでいる。
こうした国々が一斉に「謝罪と賠償」を求めても、おそらくフランスは応じることができない。そもそも予算が成立しないかもしれないほどフランスは財政的に追い込まれている。
もちろんこれはルペン氏サイドにとって有利な状況だ。マクロン大統領が拒絶すれば欺瞞を批判すればいいし応じれば弱腰と罵ればいい。かといってルペン氏サイドが大統領になったとしても問題が解決するわけではないだろう。不可逆な変化だからだ。
これまでフランスはこれを「フランサフリーク」政策によって曖昧に処理してきたのだが国際環境の変化によって徐々に前提条件が崩されていったようである。特に大西洋側の出口を求めるロシアの登場と一帯一路政策を打ち出した中国の存在が大きかったようだ。
イギリス国王は革命も経験しつつ、早くに絶対王政を諦め議会に権限を明け渡すことことで王室の維持を成功させた。
一方でフランスは王政にこだわり続けたからこそ革命という極端な結末を迎えた。今回の旧植民地政策の破綻には似たようなところがある。イギリスは早くに帝国の維持を諦めて出口を探ったからこそ「旧植民地との関係が破綻した」とは見られていない。イギリスは「撤退時期」が適切だったからこそ曲がりなりにも出口を見つけることができたと言える。
これまでフランスはアフリカとの間に曖昧・不安定・不適切な関係を構築して危機を「その場限り」で乗り切ってきた。危機感は(少なくともエリート政治家の間では)広く共有されていたが結果的には続けるか解体するか極端な二者択一を迫られることになった。マクロン政権は国内的にも「政治に期待しない冷淡な国民」と対峙しており、内外ともに事実上詰んだ政権になっている。

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