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フランスの混乱は「振り出しに戻る」マクロン大統領がルコルニュ首相を再任

7〜11分

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おそらく日本ではあまり関心を持たれていないと思うのだがフランスの政治混乱が振り出しに戻った。不信任が繰り返される無限ループである意味日本の未来なのかもしれない。

ルコルニュ首相がマクロン大統領に再任された。ルコルニュ首相は自分は僧侶兵士だから首相の地位には固執していないとしていたがこの決定を受け入れている。

常識的にはマクロン大統領が左派の妥協を受け入れたと考えるのが自然だがFrance 24の記事を見る限りそうなっていない。左派は戸惑い怒っているそうだ。

公明党が連立を離脱したニュースで「誰も過半数を取れなくなったらどうなるんだろうか」と思う人が多かった。おそらくフランスが置かれているような政治状況に対する懸念があるからだろう。誰も何も決められない国家の脳死状態である。日本の場合不信任案ごとに選挙が繰り返される地獄の無限ループになり混乱はフランス以上のものになりそうだ。

日本と同じようにフランスも誰も多数派を形成できない状況が生まれている。このため大統領が何人首相を選出しようが不信任案を受けて通らない可能性がある。誰も首相になれないが他の人が指名した首相を拒否できるという不信任案の無限ループが起きてしまうのだ。

ルコルニュ氏はこの無限ループを避けるために組閣14時間後に自ら身を引いた。しかしながら今回ルコルニュ氏が改めて首相になったことで協議から除外されていた野党(極右・極左)は今度こそ不信任案だと息巻いている。

フランスの政治は既存政党(共和党・社会党)、改革政党(再生)、左派連合(社会党から極左を含む新人民戦線)、極左、極右に分かれている。選挙の結果改革政党が負けたが、極右の台頭は防がれ主力政党のない「多党乱立」状態だ。

日本は責任を静かに少数比較第一党にババを押し付けて自分たちは責任を取らないというピボット主義が蔓延しているがフランスは対決型だ。自分たちの主張こそが正しいという人たちがお互いを罵り合い「今度こそ選挙だ!」と息巻いている。

選挙をやっても結果的な勝者は生まれないが選挙をやるごとに極端な主張をする人たちが躍進するという事情があり穏健保守(共和党)と穏健左派は選挙をためらっている。

辞表を提出したルコルニュ首相に対してマクロン大統領は48時間で次の対策を打ち出すように求め、ルコルニュ氏は左派連合との合意を取り付けていた。

その後左派政党の指導者たちはマクロン大統領と面会したがそもそも極左「不服従のフランス」は排除されており、その他の左派も「衝撃と失望を禁じ得ない」とのコメントを出している。マクロン大統領に左派や政治的に独立したテクノクラートの首班を指名するつもりはなく側近のルコルニュ氏を再指名に固執したようだ。

ルコルニュ氏は自分は僧侶兵士である(党派性があるために首相の適任者ではない)としていたが「職務上(しかたなく)」首相指名を受けるとしている。

France24によると不服従のフランスの議員の中には「来週は不信任投票だ」と息巻いている人達がいる。GEMINIによると「マクロン大統領が不服従のフランスを除外した」という説と不服従のフランス側がマクロン大統領の招待を断ったとする説が出ているそうだ。なお、左派連合「新人民戦線」の中で不服従のフランスは35%程の地位を占めているとのこと。

穏健左派政党としては今選挙をやられるとルペン氏率いる極右が台頭しかねないという気持ちがある。また左派がかろうじて勝っても不服従のフランスが更に勢力を伸ばすかもしれない。、

結果的に年内予算成立の13日を前にしても新しい組閣が決まらない可能性が高まっている。フランスの首相には解散権限がなく大統領の専権事項になっている。このため不信任を受けても議会解散は行われず「誰も首相が決まらないまま」の無限ループが起きる可能性がある。

日本ではかろうじて地方政治を舞台に「持ちつ持たれつ」の関係が維持されてきた。確かに「ウエットすぎる」関係であり「なぜ堂々と政策ベースの議論ができないんだろう」という気持ちになる。しかしながら、日本がドライな政治に舵を切ってしまうと誰も決して妥協をしないというフランス型の政治状況に陥るのかもしれない。