どうでもいい日本の政局について時間をかけすぎてしまったので、フランスとアメリカで起きている状況についてはさっくりと済ませたい。フランスではマクロン大統領の退任観測が出てきた。投資家たちのフランス資産を救うためにはもはやこれしか道が残されていない状況だ。
フランスでは予算提出期限が13日に迫っているがそもそも首相がいなくなってしまった。ルコルニュ首相はすでに「ギブアップ」宣言をしているが、マクロン大統領はもう一度野党と協議して打開案を作るように求めている。ただし共和党も社会党も協力を拒否する構え。
今回の混乱の表向きの理由は「ルコルニュ氏が提出した人事案が気に入らない」というものだった。右に寄りすぎているという主張ともっと右に寄せるべきだという主張が混在していたという。
極右も左翼も「選挙をやり直せば自分たちが政権を取れる」という見込みを持っているのだろう。フランスの議会選挙は2回行われる。最初の選挙の結果を見て「もう一度冷静になって考えてみよう」と再考ができる。前回は1回めの投票で極右が勝った。ところが決選投票の段階で選挙区調整が進み極右の躍進がかろうじて抑えられている。結果的に「勝ち組政党がない」状態に陥っておりこれが政治的に不安定な状況を作り出しているようだ。
背景にあるのはSNSで盛り上がる「核のない」抵抗運動である。もともと労働組合による動員力があった左派は自分たちがイニシアティブを取ったと思っているようだが、実際の運動体はごった煮の状態のようだ。
結果的にルコルニュ氏が事態収拾に失敗した場合にはマクロン大統領が退任を宣言し「自分の首と引き換えに予算案を通してもらう」というアイディアも語られるようになっている。
革命の本場、議会制民主主義のお手本というべきフランスだが「議会制民主主義の枠組み」による問題解決が難しくなっている。
もともとマクロン大統領は既存政党(社会党と共和党)を支持しなくなった人々の受け皿として登場した大統領だった。しかし改革は失敗し巨額の予算削減の必要に迫られている。
バイル政権は今年7月、第2次大戦の戦勝記念日(5月8日)など祝日の2日廃止を盛り込んだ総額438億ユーロ(約7兆6000億円)の財政健全化策を示し、政治的緊張が再燃。支出削減と増税に対する野党の反対を受け、首相は信任投票で支持を固める賭けに出た。
フランス政治不安、真のリスクは信任投票後-内閣退陣は既に織り込み(Bloomberg)
社会党も共和党も「困ったからといって泣きつかれても」と考えているのだろう。マクロン大統領の協力要請に応じて連立政権に加わることはないとしている。バイユ首相(当時)の巨額削減の共犯者にされることを恐れているのかもしれないが、これは当然の主張だろう。ただし彼らが協力を拒否しても躍進するのは極右と左派だけで、選挙が行われた後に極右と左派が協力する見込みも立っていない。
