議会の過半数を失ったネタニヤフ首相が生き残りをかけて周囲に敵意を撒き散らしている。シリア南部に緩衝地帯を作れとダマスカスを攻撃。またガザ地区にあるカトリック教会を攻撃した。これまでモスクの攻撃はさほど騒ぎにならないがカトリック教会の攻撃は大問題になりかねない。西側のダブルスタンダード(二重基準)には呆れるばかりだ。しかしこれも「単に謝ってみせているいるだけ」なのかもしれない。
議会過半数を失いあとがないネタニヤフ首相。どんな不安定な気持ちでいるのだろうとついつい想像してしまう。
表向きは冷静に「イスラエルの国益」を求めて行動している。だが、あるいは落ちれば即死は免れない空中ブランコに乗っているような感じなのかもしれない。傍から見ている分には冷静に計算をしているように見えるが実は常に危険な状況にある。この狂気と合理性の組み合わせはプーチン大統領にも見られる。
Quoraでは「イスラエルの財政はどうなっているのだろう?」と疑問視する人がいた。調べたところイスラエルの国防費はGDPの5%。世界的には高い水準だが中東戦争時代には30%を軍事費に費やしていた時期もあったようだ。また最近では国債の発行が増えているが債務残高は日本やアメリカと比べるとまだまだ低い状況。とても持続可能とは思えないが当面の間はなんとか維持できなくもないと言う状況。
もともと様々な宗派や部族が暮らしていたオスマン帝国領内に無理やり西側の植民地を作りそこに異質なユダヤ人をねじ込んでいるのだから「持続可能性がない状況でなんとか持ちこたえるしかない」国家群なのかもしれない。
軍事費増強を含めた予算はかろうじてイスラエル国会を通過している。超正統派が政権から離脱してしまったのだからこの先の戦線の維持は難しくなるだろう。この時のニュースによると選択肢は予算可決か解散総選挙だったそうだ。
ネタニヤフ政権はシリアの首都ダマスカスを攻撃し国際社会から批判されている。アメリカは当然イスラエルの肩を持ちシリアの政権に説明責任を求めている。シリア政府はまだまだ脆弱であり南部では州は衝突が起きているそうだ。600名近くが亡くなっているとBBCは書いている。
それにしてもなぜ今の時期にカトリック教会を襲撃したのだろう。Quoraにそう書いたところ「イスラエルに依存する状況を作り出そうとしているのではないか」との指摘があった。となるとこれはイスラエル側の戦略の一環ということになる。
もともと福祉という考え方が乏しい中東では宗教福祉団体が反政府勢力になることがある。その意味ではモスクも教会も「イスラエルから見れば同じようなもの」ということになるだろう。
ただ、今回ネタニヤフ首相は形ばかりの謝罪を行っている。トランプ政権の支持者の中には親イスラエルのユダヤ系と強硬な福音派が同居している。この2つの勢力が分裂するのを防ぎつつ、本音では「トランプ大統領もカトリック教会の攻撃を容認するだろう」と見ているのかもしれない。
結局のところトランプ大統領は何を言うかではなく何をするかが重要な大統領でありイスラエルの攻撃を阻止するような行動は起こしていない。
もはや人道倫理は西側世界には存在せず、政治家たちの生き残りのためのゲームが続いていると言えるのかもしれない。自由と人権を尊重していたはずの西側世界は短い間にここまで変わってしまったのかと感じる。
もはや人々は自由主義の理想が自分たちのために設計されているとは信じていないのかもしれない。
