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トランプ政権が同盟国を狙い撃ちにした関税 日本は25%

11〜17分

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先ほどトランプ大統領が日本に対する関税案を発表した。8月1日から25%の関税となる。これは交渉失敗を意味し石破政権にとっては逆風となる。アメリカでは「同盟国を狙い撃ちにするのか」という驚きとともに解放の日の混乱に逆戻りするのではないかとの懸念も見られた。なおナスダックとダウはそれぞれ1%前後下落している。ただQuoraでは冷静な指摘もあった。為替が下がっているため関税に意味はないのでは?というのだ。

石破政権の関税交渉は失敗に終わった

第一に自民党・石破内閣がなにの見通しもなく楽観的な期待を振りまいていたことがわかった。赤澤経済再生担当大臣の交渉にはなんの意味もなく関税税率は24%から25%になった。さらに報復税率に備え「報復すればもっと関税を上げる」と脅している。

ただし最初に「ああそうだな」という指摘があったので書き加えておきたい。最近まで為替は1ドル110円だった。現在は146円だ。比率を取ると1.3になる。今後関税の影響でアメリカのインフレが進み日本の賃金が上がらないと考えると25%の関税は「ペイ」する可能性がある。関税率にばかり気を取られるのも考えものなのだ。

前提は「日本の賃金が上がらないこと」なので複雑な気持ちを持つ人もいるかも知れない。これは確かにその通りだ。しかしアメリカのインフレにフリー・ライドして儲けるというのもこれはこれで随分とムシの良い話である。

その意味では関税交渉が失敗に終わったというよりは総合的な経済政策が打ち出せていないことが問題なのかもしれない。

トランプ大統領の現実を度外視した被害者意識

TBSによるとトランプ大統領は「日本の関税や非関税障壁のせいでアメリカの貿易は赤字状態にある」と指摘している。日本側から見ればアメ車が売れないのは日本の市場に合致していないからだがトランプ大統領はお構いなしで1980年代の記憶そのままの被害者意識をつのらせている。

また日本は対米デジタル赤字状態にあるがこれも考慮されていない。優位性のあるサービスを提供すれば日本人は喜んでアメリカ製の製品やサービスを受け入れるはずである。

トランプ大統領の指摘は当たらない。

ただし、トランプ大統領の一方的な被害者意識はこのブログを読んでいる方であれば織り込み済みなのではないか。日本は理不尽な対応を押し付けてくるトランプ政権に対峙する必要があるがその準備が整っているとは言えない。

日本経済は下落傾向 「出口なし」の参議院議員選挙は与党に逆風

さらに景気判断が4年10ヶ月ぶりに悪化した。まだ誤差の範囲ではあるが関税の影響は織り込まれていない。自民党・公明党政権は成長戦略を提示できず場当たり的な給付金プランでお茶を濁そうとしているが、今後関税の影響が企業業績に重くのしかかることになる。

野党は「アメリカに頼れないのだから財政を拡大して内需を喚起すべきだ」と主張している。一見もっともらしく聞こえるのだが、日本は海外から資源を輸入し海外に輸出して稼いでいた国である。外からお金が流れ込まなければ延々と財政を拡大させて内需を支え続けることになってしまう。

つまり「詰んだ」状況の中でマスコミが煽り立てる事実上の政権選択選挙に対峙しなければならない。

同盟国を狙い撃ちにするのか アメリカ国内では驚きと苛立ちも

トランプ大統領とベッセント長官の発言が食い違い

時事通信が「新たな関税「12か15カ国」に書簡 米大統領、7日送付へ―8月1日まで交渉余地」という記事を出している。これを普通に読めば、主語をトランプ大統領にしたくなる。しかし実際には12-15カ国に関税率を通知すると言っているのがトランプ大統領で、8月1日まで交渉余地があると言っているのはベッセント財務長官だ。ただしメディアは即日発行しなかったことを根拠に「大統領が期限延長の大統領令に署名した」としている。

ベッセント財務長官は「関税は交渉カードである」という印象をつけようと躍起になっているがトランプ大統領自身の認識は極めて曖昧だ。関税を減税のための収入源と思い込んでいる可能性がある。

トランプ大統領が合理的に思考ができているのかはよくわからない。あくまでも印象にすぎないがが「きちんと睡眠を取って思考を整理していないのでは」と感じる。一方でベッセント財務長官は関税がもたらすであろうインフレがFRBの意思決定に悪い影響を及ぼすことは理解しているのではないかと思う。だから「8月1日まで間に合いますよ」と言っているのである。冒頭で触れた為替の問題もその一環で理解できる。米ドルが一人勝ちすると金利差が開き貿易にとっては不利になる。関税は国内でインフレをもたらすがこれは「成長」特別が出来ない。

このベッセント財務長官の発言についての解釈を聞いていると日本の識者のだいたいのポジションが分かる。経済界や共和党に近い人ほど「助け舟を出してくれている」と指摘する傾向がある。

同盟国を狙い撃ちにすべきではないとアメリカの一部メディアが主張

一方でアメリカ合衆国にも衝撃が広がっている。結局猶予期間にはなんの意味もなく元の不透明な状況に戻ったとする分析記事が多かった。

さらにAxiosは次のように書いている。日本を含む緊密な同盟国にまず通告書を送ったことを問題視しているのだろう。

時事通信も「同盟国・日本と絆強化を 関税政策への抵抗は「理解できる」―米紙」という記事を書いている。アメリカももっと同盟国を大切にすべきだとも言えないのでワシントン・ポストの主張を引用しているのである。

一時は対中国包囲網の一環だろうと思われていた関税だが対中国の関税については詳細がよくわかっていない。そんな中まず同盟国を攻撃するのか!という驚きが広がっているのだ。