むちゃくちゃトップが就任すると有能な部下たちが組織から静かに離れてゆく。傾きかけた会社ではよくあることだ。そこに登場するのが無能な経営幹部。次第に事業が立ち行かなくなると無能な幹部たちが逆ギレして騒ぎ出す。
ハリガン検事がニューヨーク・ポストで判事を声高に批判している。曰く「私を操り人形扱いしていて悪意がある」という。だが、事情を調べてみるとどうもハリガン検事に瑕疵があったらしい。つまりハリガン検事は自分の失敗を隠すために逆ギレしていることになる。極めて傍迷惑な話だ。
さらにこのあと話が進行した。司法省はハリガン氏の失敗を「なかったこと」にしたようだ。おそらく裁判所には記録が残っているだろうがそれはフェイクニュースだと言うことなのだろう。
ことの発端はトランプ大統領の政敵狩りだった。ターゲットになったのはコミー元FBI長官。コミー氏は「自分だけがターゲットになったのはおかしい」と主張し裁判を戦い抜く覚悟だった。
ところがここで重大なやらかしが発生する。元FBI長官起訴で不正行為 連邦地裁が記録の提出命令と数日前にREUTERSが書いていた。結局ハリガン検事が手続き上の瑕疵を認めたことでこれが事実だったことが判明した。
記事の内容がよくわからないので調べてみた。
アメリカの重罪裁判にはどうやら一般市民が参加するプロセスが2つあるらしい。裁判の証拠が揃っているかを審査する大陪審と有罪かそうでないかを判断する陪審だ。大陪審は裁判が始まる前に起訴状などを吟味し「裁判を進めてよろしい」と許可を出す。
ところがどうやらトランプ大統領の元弁護士で刑事事件を初めて扱うハリガン検事は仕組みを十分に理解していなかったようだ。このため大陪審長ともう一人にだけ起訴状を見せて他の人達に起訴状を渡さなかった。
裁判所もなんとかして裁判を成立させようとハリガン検事とハリガン検事をサポートするレモンズ連邦検事補に問いただしたがレモンズ氏も最後には黙り込んでしまった。
これに慌てたハリガン検事はニューヨーク・ポスト(ニューヨーク・タイムズではない)に独占声明を流してナックマノフ判事を批判した。つまり自分の失敗を認めず逆ギレしたわけである。
事態はこれだけでは終わらなかった。当初ABCニュースの記事は「ハリガン検事と司法省が裁判所を批判している」となっていたのだがその後書き換わった。捜査当局は大陪審全体が起訴状を審査していたのだ!と発表したという内容。つまりハリガン検事の主張が裁判を頓挫させることを懸念して「なかったこと」にしている。当然ハリガン検事の主張は裁判記録に残っており報道もされている。
いわゆるオルタナティブ・ファクト(もう一つの真実)というやつである。
別のエントリーで「大統領はベッセント財務長官の更迭を示唆した」ニュースをお伝えした。有能な人はそれなりの理屈でトランプ大統領を支えようとするがやはり長期的にトランプ政権に居続けるのは難しいようだ。パウエルFRB議長も退任が迫っている。自分のキャリアを傷つけるような意思決定はしないだろうが、かといって「命をかけてFRBを守る」ようなこともないだろう。
結果的に「アメリカの仕組み」を支える人は一人づつトランプ大統領から距離を置くこととなり、代わりに「無能な人」に置き換わってゆくのだ。
この件で最も気になるのはヴァージニアの検察当局の動きだ。ハリガン検事が無能な事はわかっていたのだから組織としてサポートしても良かったはずだ。おそらくは組織全体で「かかわらない」ことに決めていたのではないだろうか。こうして辞任しないまでも距離を置く人達が増えている。
