トランプ大統領はチキン野郎だ。フィナンシャル・タイムズの記者の発言は瞬く間に世界に広がった。この価値転換は極めて重要だ。トランプ大統領の力の源は何をしでかすかわからない狂人理論の使い手と言うイメージだ。しかし実際には大したことはできないだろうという評価が定着すれば、アメリカの交渉力は大いに損なわれるだろう。
英語の表現はTACO(Trump always chickens out)である。先日のABCニュースのコメントに「チキンアウトは動詞だから状態で表現するのはよろしくない」というコメントが付いた。
そこで各メディアがどう表現するのかと思っていたのだがAFPは「チキって退く」というやや無理のある表現をしている。動詞を活かしたかったのだろうかと思った。共同通信は「びびり」と表現する。こちらは動詞を属性を表す名詞に変えた。びびりな人と形容詞的に使うこともできる。状態を表す表現で日本語と英語の使い方の違いを感じさせることができる。
ABCはTrump lashes out over viral ‘TACO trade’ meme. What does it stand for? と今回の件を面白おかしく表現している。to Lash outで食って掛かるとか暴言を吐くと言う意味があるそうだ。
このチキン野郎という評価は以前から出ていたようだ。木村太郎氏がニューヨーク・タイムズなどのクオリティペーパーが「中国に対してトランプ大統領が先にまばたき=妥協した」という低俗な表現をしたために驚いたと言っている。この記事が出たのは解放の日からしばらく経ってからのことである。
このように何をしでかすかわからないトランプ大統領という一種のブランドは急速に崩壊しつつある。
ただしこれがトランプ政権の悪夢の終わりを意味するわけでもなさそうだ。
ルビオ国務長官はこのところガチの確信犯として様々な情報発信を行っている。ボスがチキンアウトする中でやりたい放題だ。留学生を巡り中国を激しく敵視する発言を行っていたが、今度はRemigrationと言う言葉を使っている。
アクシオスによればRemigrationはヨーロッパの極右がよく使う表現だそうだ。一度迎え入れた移民を追放すると言う言葉の響きを和らげるために「再移民」という表現に変えている。最高裁判所もこの方針を支援しておりバイデン政権下で保護されてきた不法移民の保護停止などを打ち出している。
またケネディ保健福祉長官はありもしない論文を引用していたが、これが露見すると「形式上の誤りがあった」としれっと軌道修正している。そもそも「自分から健康アドバイスを受けてはいけない」と嘯くような人物なのでレポートに責任を取るつもりはないのだろう。
イーロン・マスク氏の放埒な発言も薬物の影響を受けていたのではないかとの指摘が出ている。
これまでトランプ政権の問題の根源はトランプ大統領だと思われていたが、実はそうではなかったようだ。トランプ大統領のグリップが弱まれば弱まるほど閣僚たちの放埒な政策運営がますます極端なものになってゆくのである。
このTACOと言う言葉を嫌うトランプ大統領は中国に対してMr.ナイスガイであることをやめたと発言しており、株価に一定の動揺を与えている。強がってみせようとして却ってふらついている様子を露見しているといえる。狂人どころか極めてわかりやすい俗物だったということだ。
トランプ氏は30日朝、「一部にとっては予想外ではなかっただろうが、中国は米国との合意に完全に違反した。ミスター・ナイスガイでいるのはもうやめだ」と自身のSNSであるトゥルース・ソーシャルに投稿した。
トランプ大統領、習主席と会談するつもり-「合意に違反」と非難(Bloomberg)
