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トランプ大統領の経済演説の「ソレジャナイ」感

10〜15分

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トランプ大統領の経済演説が波紋を広げている。この展開何かに似ているなあと思ったのだが、麻生太郎総理大臣の「カップラーメン400円」発言を思い出した。

このところトランプ大統領はかなり焦りを募らせているようだ。「経済はA++だ」という発言のあとに、資金が経済を良くするのに時間がかかると弱気な発言をした。その後で就任後1年の経済評価を行い「アメリカの経済はすべてうまく行っており物価は下がっている」と主張した。

民主党はこの演説を批判しなかったようだ。またメディアは淡々と「たしかにガソリン価格は下がったが、あれもこれも下がっていない」と淡々と事実を並べている。

これまでトランプ大統領は国境問題など「アメリカ人にとってあまり身近でない問題」を取り上げてきた。しかし今回は多くのアメリカ人の眼の前で起きていること(例えばスーパーマーケットの値上がり)について扱っている。つまり「トランプ大統領は自分たちの暮らしを本当に理解してくれているのか?」という違和感がうっすらとまとわりついている。

BBCももはや内容を一つひとつ拾うことはない。

演説に新しい情報はほとんどなく、いくつかの主張は誇張や無根拠のものだった。

トランプ氏、米兵への「戦士配当金」を発表(BBC)

ここで思い出したのが麻生総理の漢字の読み間違いとカップラーメン発言だ。

麻生政権は発足当初から「漢字の読み間違いが多く、この人は本当に我々の言っていることをわかってくれているんだろうか?」という疑念が生じていた。さらに「カップラーメンは買ったことがない、きっと安いんだろう、だいたい400円くらいか?」と発言してしまう。少なくとも一般市民とかなり意識がズレており「400円のカップラーメンが安い」と感じる人なんだ……という評価が成立。その後何を言っても信頼されなくなってしまう。

政策になんとなく違和感が持たれていても、それがすぐさま支持率の低下に結びつくわけではない。ある日突然「違和感を形にする」ものが降ってきてこれまでの違和感が「形」になる。これが一番怖い。

トランプ大統領は関税の配当を兵士たちに配るという。一般庶民は経済用語は理解できないが「配当」という言葉はなんとなく知っており「ああトランプ大統領は優秀な経営者なんだな」と感じてきた。しかし「眼の前の現実がわかっていない」という評価がそれを上書きする可能性は十分にある。

メディアは物価が下がっていないというエビデンスを淡々と示すだけでなく、静かに「支持率が下がっていますよ」「あなたはまだそこにいるんですか?」と語りかけるように世論調査の結果を伝えている。

トランプ大統領は激しい攻撃をエネルギーに変えてきたようだが、この淡々と事実を積み重ねる手法への耐性はあまり強くなったようだ。自我を補償するためにかつての偉大な大統領たちの評価を書き換え始めた。自分が先人たちのような偉大な大統領になれないことに気が付き始めたのかもしれない。

冷静に観察すると「とにかく自分のことしか見ていない」のがよく分かる。

ビル・クリントン元大統領の説明板は、政策的な功績をたたえる一方で、妻のヒラリー・クリントン元国務長官が2016年の大統領選挙でトランプ氏に敗北したことに言及した。「2016年、クリントン大統領の妻ヒラリーは、大統領選挙でドナルド・J・トランプ大統領に敗北した!」

「史上最悪」「分断招いた」 歴代大統領こきおろしの説明板、トランプ大統領がホワイトハウスに設置(CNN)

「バラク・フセイン・オバマは、初の黒人大統領、地域社会活動家、1期務めたイリノイ州選出上院議員で、米国史上最も分断を招いた政治家のひとりだった」。説明板はそう記し、トランプ大統領が批判する医療保険制度改革やパリ協定署名などの実績もこきおろしている。

「史上最悪」「分断招いた」 歴代大統領こきおろしの説明板、トランプ大統領がホワイトハウスに設置(CNN)

肖像ではなくオートペン(署名機)の写真を使ったジョー・バイデン前大統領の説明板は、「スリーピー(眠そうな)ジョーは米国史上ずば抜けて最悪の大統領だった。米国史上最も腐敗した選挙の結果、大統領に就任したバイデンは、前代未聞の惨事を次々に引き起こし、国家を壊滅寸前に追いやった」と酷評。「だがそうした中でもトランプ大統領が圧勝して再選され、アメリカを救った!」と付け加えている。

「史上最悪」「分断招いた」 歴代大統領こきおろしの説明板、トランプ大統領がホワイトハウスに設置(CNN)

そんな中FBIの副長官が退任する。MAGAの要人の離脱は実務的に大きな意味はなさそうだが「これ以上ホワイトハウスにいても自分のキャリアに役に立たない」と考えたのかもしれない。一方で中南米司令官も退任した。後に戦争犯罪と言われかねないベネズエラ攻撃の主体にならないように密かに身を引いた可能性がある。すでに10月に退任報道が出ていた。特に実務者が次々と退任することになれば「静かな終わりの始まり」と言って良いかもしれない。

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