トランプ大統領は会見を開き、四つの目標を発表した。ミサイル攻撃能力の破壊、海軍殲滅、核兵器開発能力の除去、国外のテロ組織への資金提供の排除である。しかし、具体策は示さなかった。当然だ。誰も具体策を示すことなどできないだろう。そもそも事態を自分で収拾したことがないトランプ大統領は泥沼の混迷に陥りつつある。
トランプ大統領はあやふやな戦略目標を発表した以外はSNSでの一方的な投稿と記者に対する短い発言だけを繰り返していて、その発言も相矛盾するものになっている。日本ではこれが更に断片的に伝えられるだけなので「何がどうなっているのかわからない」のは当たり前だ。そもそも問題を起こした本人が事情を理解できていない。
彼がこのような状況に陥った理由は、国内外に二つある。ICE(U.S. Immigration and Customs Enforcement)の移民掃討作戦は、アメリカ合衆国最高裁判所が抑止力になっていた。さらにミネソタ州は、トランプ大統領を滅ぼしたいわけではないため、掃討戦が終われば敵対行為には至らなかった。
また、ベネズエラの作戦が思いの外うまくいき、「体制転換」という成功事例を学習してしまった。トランプ大統領は、この過去の成功体験をイランにはめ込んでしまったのだろう。
どうしてよいかわからなくなったトランプ大統領はディールに固執しているが、そもそも自分たちで交渉相手を根こそぎ潰してしまった。おそらく「誰と交渉すればいいのか」を聞いて回ったのだろうが、交渉相手はいない。そこで「交渉はできない。全員死んでしまったからだ」と主張している。
基本路線は、武力で脅して交渉相手(そもそも存在しないわけだが)をテーブルにつかせることであり、「アメリカは永遠に軍事展開できる」と誇示している。しかし、これは不可能だ。ロシアは国家総動員体制を構築できるが、アメリカ合衆国には資本主義と民主主義という制約条件がある。
トランプ氏は、米国の弾薬には「事実上無制限の供給」があり、「これらの備蓄だけで永遠に、成功裏に戦争を遂行できる」と投稿。「米国は万全の備えで、大勝利の準備ができている!!!」とした。
トランプ氏、米軍は「永遠に」戦争可能 大勝利に万全の備え(REUTERS)
宣戦布告は議会の権限であるため、トランプ大統領に残された時間は60日弱に限られている。撤退期限を含めても90日しか活動できない。さらに今回の「永遠の戦争」発言によって、ついにアメリカの株式市場が崩れ始めた。今後、「戦争とインフレの関係」が語られるようになれば、大統領には強い反戦圧力がかかるだろう。すでにCNNの調査では、半数以上(59%)が反対を表明している。
- NY株、一時1000ドル超安 イラン情勢受け原油一段高(時事通信)
- 米国経済、イラン戦争で不確実性高まる エコノミストらが指摘(REUTERS)
- 米国人の59%がイラン攻撃に反対、過半数が紛争長期化の可能性高い CNN世論調査(CNN)
New York Timesは無料公開記事を出し、ネタニヤフ首相とトランプ大統領がどのように戦争を決めたのかと、政権が全体として説明責任を放棄しつつある実体を淡々とログに残している。今回の戦争ではイランが危機にあるように見えるが実はトランプ政権下でアメリカの民主主義が陥ってきた危機を可視化していると言えるのだ。この後この記事は盛んに引用されるようになるだろう。
今回の軍事作戦は全体像を掴もうとするとかなり骨の折れる作業になる。短いセクションに分割し「興味がある部分だけ」を読んでもらえれば良い構成にしている。

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