サンデーモーニングが「支持率は最低に・・・トランプ大統領に強まる逆風 “関税インフレ”にエプスタイン疑惑が追い討ち 岩盤支持層の離反も【サンデーモーニング】」という記事を出している。左派的傾向が強い番組のためトランプ政権に対する嫌悪感が強く「あってはならない政権」と考えているのだろう。だが、残念ながら民主党の内部崩壊も合わせて伝えなければアメリカ合衆国の政治について総合的な理解ができていないのではないかと感じた。
とはいえ共和党側にも変化がある。どうやらエプスタイン氏の裁判記録を公開すべきであると考える議員が増えているようだ。背景にあるのがアメリカで広がりつつあるエスタブリッシュメントに対する反発と倫理的嫌悪感だ。
この反発がこれまでトランプ大統領を支えてきた神話的構造の基盤を突き崩しつつある。
TBSのサンデーモーニングは教科書に書かれているような民主主義のお約束が守られないことに腹を立てる傾向がある。政治に問題解決ではなく独特の清廉さを求めているようだ。
民主党は多様性や再生エネルギーなどを推進する傾向が強い。左派的な傾向がある人はこうした政策に一種の憧れを持っており、共和党=悪・民主党=善という二元論的な構図を作りたがる。先進国アメリカで起きていることが日本では起きないと考える傾向がある。
しかし日本にはインテリを憎悪している人たちもいる。彼らは民主党的な「善」に対してかなりの嫌悪感を感じており左派的な偽善を暴きたがる傾向を持っている。
この独特にねじれた「善」と「反インテリ感情」は政治的議論を円滑に進めるうえで障壁になることが多い。一方は自分たちの考える善が推進されないという苛立ちを持っているが、もう一方は独特の劣等感を隠したがっている。
しかしながらこの問題はアメリカ合衆国で別の展開を見せつつある。ケンタッキー州選出のマッシー議員(共和党)がエプスタイン氏の裁判記録に賛成する共和党議員が100人を超えそうだと主張している。
もちろん、態度を決めかねている議員に対して「バスに乗り遅れるなよ」と訴える狙いもあるのだろう。しかし、これは共和党・民主党という従来の対立軸では語れない驚くべき変化だ。
今回最初の請願に同調したのは性被害サバイバーを含めて4人の共和党議員だけだった。しかし請願が通ったことで「裏切り者」であるとみなされるリスクが減っている。さらに民主党が「エスタブリッシュメント対アメリカ人」という対立構造を作った。
ここでトランプ大統領が必死の抵抗を見せたことが逆効果になった。司法省を呼び、SNSで捜査命令を公開し、MAGAのマジョリー・テイラー・グリーンに公開破門状を叩きつけた。マジョリー・テイラー・グリーン下院議員にはMAGAからの脅迫が殺到しているそうだ。
マッシー氏は「別件で捜査が開始されれば継続中の案件に関係する裁判記録は公開できない」というルールが発動する可能性があると指摘している。つまり下院で議案が通っても公開妨害ができるというわけだ。しかしこれも状況証拠としてトランプ大統領が何かを隠したがっていると受け止められてしまう。
仮に今回の件で裁判記録が公開されなくても、有権者の中には「実はトランプもエスタブリッシュメントの味方に過ぎなかった」と考える人が出てくるだろう。
マッシー氏の選挙区は共和党が強い地域のためMAGAに頼らなくても勝利が見込めるという事情がある。これが当選のためにトランプ大統領への忠誠心を必要としていたマジョリー・テイラー・グリーン議員との違いだ。
日本では民主党・共和党の対立構造は右と左のイデオロギー対立として理解される傾向が強いのだが、アメリカ合衆国では「エスタブリッシュメント対一般庶民」という対立構造が作られていることがわかる。
選挙に勝ったはずの民主党も民主社会主義、穏健な民主党、イデオロギー的には中道からやや右寄りだが民主党に参加している議員というグラデーションがあり、現在路線闘争が展開されている。これといったスターがいない状況で一枚岩で中間選挙を戦うことができるのか、あるいはこのまま内部分裂してしまうのかに注目が集まっている。
アメリカの好調な経済は実は格差によって維持されてきた。共和党はその過程でMAGAと呼ばれる極端な人たちに乗っ取られたが、民主党も「偽物の理想」を掲げてエスタブリッシュメント優位な経済を温存してきた歴史がある。
エプスタイン氏はおそらく民主党・共和党の垣根を超えてエスタブリッシュメントとの強いつながりを構築していた。しかしそのつながりは少女たちの性的な犠牲の上に成り立ってきた。最終的にエプスタイン氏は政治に強い野望を抱くようになり自分がいかに有能でどれだけ政治家たちの秘密を知っているのかを宣伝して回っていたようだ。今回のメールによって彼はロシアにもアプローチしていたことが明らかになっている。そして彼は何らかの理由で獄死した。これらはすべてトランプ政権下で起きている。
日本ではジャニー喜多川氏の問題が芸能界全体を巻き込む問題に発展した。そこでわかったのはテレビ局が視聴率を取るために有力なタレントを囲い込もうとしていた実態だった。有能なタレントをたくさん抱えている人は「数字が取れる実力者」という評価が得られる。そのために多少の性的犠牲はやむを得ないものと考えられていた。
ジャニーズ問題が大きくこじれたのはそれを隠したかった人が多かったからである。隠せば隠すほど人はそれを暴きたくなる。
アメリカ合衆国は同じようなことが政界を巻き込んで起きていると言えるのかもしれない。有権者は次第にこの状況に気が付き始めており「誰がその構造を隠蔽しようとしているか」に注目するようになってきているのだ。
PBSなどの調査によるとアメリカ人の77%が情報公開に賛成している。これまでだと共和党の有権者だけ数字が低くても不思議ではなかったが67%が公開に賛成しているそうだ。
つまりトランプ大統領がそれを隠そうとすればするほど彼にとっては大きな傷になる。

Comments
“トランプ大統領の抵抗が逆効果に エプスタイン問題に進展” への2件のフィードバック
公開しろと言ったりするなと言ったり、色々と目まぐるしいと思っていましたが、BBC NEWS JAPANで「エプスティーン元被告のファイル完全公開、トランプ氏が一転し支持 共和党議員らも要求」という記事読み、また言っていることが変わったなと思ったのと同時に、政治家は目まぐるしく動く情勢に必死に食らいついて飛ばされまいとしているように見え、なんかそれはそれで大変だなと哀れに感じるのでした。
もはやまともに考察するのはムダという感じなので、周りに火をつけて自分だけは生きて出るつもりなんでしょうね的なストーリーにまとめました。確かに政治家さんは大変そうです。