人々の欲望を背景に、「中年の危機」という本来であれば自己統合へと向かう契機を失ったトランプ大統領が、現在の世界的混乱を引き起こしている。
もしこれがトランプ氏個人の問題であるならば、最終的には本人の破綻によって収束するはずである。しかし現実にはそうなっていない。むしろ破綻しつつあるのは、日本を含め、「弱さへの直面」を回避し続けてきた世界そのものではないか。
このところのトランプ大統領の発言は、「内向(I)」と「直感(N)」に強く依拠している。一般的には、これは「非現実的な見込み」として認識される。しかし彼の場合、その見込みが「感情(F)」によって強化され、さらに「判断(J)」によって固定化されているため、修正が困難になっている。
この構造に従えば、アメリカとイランの戦争は最終的にアメリカの完全勝利で終わるはずである。そして、その結果としてカーグ島の石油積み出し施設を掌握するというシナリオが描かれる。しかし、ホルムズ海峡の利用主体は日本、中国、ヨーロッパであり、その安全確保は他国に委ねればよい、という発想になる。
ヘグセス国防長官も一時は異論を唱えようとしたが、最終的にはシチュエーションルームに残る選択を「自発的に」行ったとされる。これは、トランプ大統領の「直感」が周囲に対して強い影響力を持っていることを示している。さらに、日本から高市総理が訪米し、「世界を平和に導けるのはトランプ大統領しかいない」と称賛したことで、彼の確信は一層強化されたと考えられる。
最後に彼は自分の思い込みをSNSで記述し固定する。結果として、「自分は正しい」という認識が強化され続ける構造が出来上がっている。
しかし一方で、ガソリン価格は高止まりしており、ベッセント財務長官はロシア産原油に対する制裁の緩和や、イラン産原油の禁輸措置の見直しに動いている。これは結果的にイランに資金と情報の流入をもたらし、戦争の長期化につながる可能性がある。
米政府、海上停滞中のイラン産原油売却を容認 30日間の制裁免除措置(REUTERS)
報道によれば、政府内部では「戦争が6か月程度継続する可能性」が分析されているとされる。しかしトランプ大統領自身は、「自らの直感こそが最も信頼できる」と考え、インテリジェンス機関の分析を重視していないように見える。
国防総省内でここ数週間出回っている国防情報局(DIA)の内部評価では、イランはホルムズ海峡の封鎖を1カ月から6カ月継続する可能性があると判断しているという。文書の内容に詳しい情報筋4人がCNNに明らかにした。ただしホワイトハウスや国防総省の当局者は、この評価は真剣に受け止められておらず、特に一部で最悪のシナリオとの見方もある6カ月の時間枠については深刻視されていないと主張した。
ホルムズ海峡封鎖、米国は長期化阻止に躍起だが明確な策なし 「最悪6カ月」のシナリオも(CNN)
今やアメリカ合衆国に政府は存在しない。統合されない個人と直感で暴走する大統領が存在するだけなのである。

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