今回の分析から、トランプ大統領と高市総理の会見が成功するための要件が見えてくる。
第一の要件は、トランプ大統領に説明を求めないこと。また、トランプ大統領を説得しないこと。
第二の要件は、記者たちから質問された場合、全面的にトランプ大統領に賛同するが、決して日本のコミットメントを表明しないこと。
第三の要件は、「これら二つの要件が守れた限りにおいて」、事態収拾ができないトランプ大統領に代わって、事態収拾のために具体的に動くこと。トップのゴーサインだけをもらったら、あとは事務方で処理すること。
トランプ氏にとって外交とは、自分の有能さをひけらかすチャンスである。一方で会談が終われば、内容など覚えていない。安倍総理はトランプ大統領の性格をよく理解しており、トランプ大統領を承認し続けた。トランプ大統領は事あるごとに電話をかけてきて一方的に要件を伝えてきたが、「日本の立場を理解していない」として何も言えなかったこともあったようだ。
トランプ大統領は安倍総理の退任を寂しく思ったそうだが、「自分を否定したり説教したりしない」という意味で貴重な存在だったのかもしれない。
同時に、この成功の要件は「トランプ大統領の発言が修正しうる」限りにおいてしか有効でないことも分かる。高市総理はトランプ氏との間に線を引き、「トランプ氏に生存権を渡していない」限りにおいてしかワイルズ化できない。
トランプ大統領は明らかに高市総理に強い期待を持っているが、それは国と国の話し合いというより「緊張のさなかの癒やし」のような期待感だ。
高市早苗首相は19日、米国のトランプ大統領とワシントンで会談する。両首脳は同日、ワーキングランチと夕食会をともにする予定だ。日本政府関係者は「トランプ氏が1日に2回外国首脳と食事をするのは異例の厚遇だ」と喜ぶが、内実は厳しい。
インタビュー:日米会談、高市氏は「グレーゾーンの用意を」=上智大・前嶋氏(REUTERS)
現在、高市総理と日本社会が置かれている不安材料は三つある。
第一は、「高市総理が正解にこだわっている」という問題である。正解にこだわる人は、「スージー・ワイルズ」のようには自由に動けない。
第二は、日本のメディアがトランプ大統領の発言に振り回されているという点である。実は「自分で状況を収拾できない」ために慌てているだけで、発言の一つひとつを真に受ける必要はない。しかし、日本はアメリカ合衆国に依存しており、発言を無視する心理的余裕がない。
第三は、高市総理自身が「事態収拾を不得意としている」という問題である。「スージー・ワイルズ」は決して自分がトラブルの一部にならない。トラブルはアルコール依存の父親のようなもので、すべて管理対象である。自身も度々舌禍事件を起こしている高市総理が、「スージー・ワイルズ」になるのは容易ではない。
ここで対処を間違えると、日本も世界も大惨事となる。そして間違い方には二つの方向がある。距離を詰めすぎて「家族化」する誤りと、逆に距離を空けすぎて「敵認定」されてしまう誤りである。
この微妙な期待を言語化したのが「グレーゾーン」である。高市総理は2回の食事会を通じてこのグレーゾーンをうまく泳ぎきって日本に生きて戻ってこなけければならないのだ。
では、高市氏はトランプ氏にどう向き合うべきか。前嶋氏は「トランプ氏に提示できる『グレーゾーン』をできる限り多く用意することに加え、イランにうまく接触して輸送の安全を確保することも必要だ。中国との関係悪化が日本の立場をより危うくしていることを考えれば、対中関係の改善も必要だろう」と述べた。「玉虫色の姿勢でどうトランプ氏に従ったように見せるかが問われている」
インタビュー:日米会談、高市氏は「グレーゾーンの用意を」=上智大・前嶋氏(REUTERS)
トランプ大統領の特殊性は「内面に能力がない」という意味ではなく、「外部化された処理の方が機能してきた」という適応の結果である可能性が高い。そしてこれまでのトランプ政権ではこの仕組みはかろうじて機能してきた。
しかし今回のイランをめぐる対応の混乱は、この外部化された問題処理の枠組みが従来と同じようには機能しなくなりつつある可能性を示している。これを単なる一時的な混乱と見るか、構造的な限界の兆候と見るかによって評価は分かれるだろう。
日本社会はこれまで通り「アメリカ合衆国の安定」を前提として安全保障政策を組み立ててよいのかという問題意識を持つ必要がありそうだが、その前にそもそも「高市総理が無傷で戻ってくること」を祈らずにいられない。長期的な問題を心配している余裕はない。
外務省はトランプ大統領に何を言われるか戦々恐々としている。トランプ大統領はイランで頭がいっぱいだというが、実は日本もトランプ氏の不規則な発言に身構えて頭がいっぱいになっている。高市総理がぎこちない姿勢を見せれば、トランプ・高市会談は大惨事に終わるだろう。
- 焦点:崩れた日米首脳会談の「青写真」、中東情勢が最大の焦点に(REUTERS)

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