トランプ大統領の「ドルの価値」発言でドル売りが加速し金の価格が高騰した。この発言はベッセント財務長官が強いドル政策を強調したことで歯止めがかかった。しかしそもそもベッセント財務長官は火事が起きていることを悟られては困る立場。にも関わらず表に出てきて「火は出ていません」と発言せざるを得なかった点に大きな問題があると言わざるを得ない。
よく地政学リスクでドルや金などの安全資産が買われると表現されるが、今回の地政学リスクの原因はトランプ大統領自身だ。このためドルが売られ金が買われた。そして円は相対的に高くなった。そもそも日本も構造的に円安なのでドル・円ンのボラティリティは高くなってゆくかもしれない。
日本ではトランプ大統領が円安を是正する発言と受け止められたようだ。しかし金融市場関係者は「いつものことではあるが何を言っているのかよくわからない」と感じたようである。
とはいえ今のアメリカの株式市場は絶好調なのでファンドマネージャーたちも市場に参加しないわけには行かない。このため多幸感漂う株式市場と金の価格上昇がセットになっている。
アメリカ合衆国は徐々に「インフレを容認して債権の価格を維持する」か「金利上昇を抑えるか」の二者択一を迫られている。FRB議長にはトランプ大統領への忠誠心が問題視される人物が選定される可能性が出てきた。つまりなりふり構わず国債市場を防衛しなければならないと財政当局が見なしている可能性がそれなりに高まっている。
しかしトランプ大統領はおそらく問題を正しく認識できていないのだろう。
ベッセント財務長官の「ドル円介入は絶対にない」という発言はそんな中で行われた。普段財務長官が介入の有無を示唆する発言を行うことはない。それだけにトランプ大統領の発言のインパクトがかなり重かったことが分かる。
ミネアポリスで起きた騒ぎは共和党の支持者たちに強い不安を与えている。これまで銃所持の擁護者だと信じていたトランプ大統領が繰り返し「プレティ氏は銃を持つべきではなかった」と繰り返し主張しているからだ。
確かにトランプ大統領はミネアポリスの問題を収束させようとはしているのだが、発言が一貫していない。つまり問題の所在がどこにあるのか徐々に把握できなくなっていることが分かる。
アイオワを皮切りにトランプ大統領は中間選挙モードに入った。一方で連邦政府閉鎖問題はまだ決着がついていない。すでに法案は下院を通過しており上院通過も問題がないとみられていたが、ミネアポリスの問題で上院・民主党が反発を強めているのだ。しかしトランプ大統領は「ミネソタ州知事のとの会談は建設的だった」と主張しただけで実効性のある対策を打ち出していない。
2026年に入り、ウクライナ問題でトランプ大統領は「プーチン・ゼレンスキー両氏との対話は建設的であり、解決まであと一歩だ」と強弁し続けている。しかし、米国民の多くにとってウクライナは依然として「遠くの戦争」に過ぎない。 深刻なのは、連邦政府閉鎖を招きかねない予算対立など、米国内の重要課題に対しても彼が同様の「ディール頼み」の楽観論を繰り返していることだ。 市場が「トランプ氏の手法では、ドルの信認に関わる危機を根本的に解決できない」と見限り始めても不思議ではない。日本では、この米国発の構造的リスクが、依然として「トランプなら何とかするだろう」という根拠なき期待の陰に隠れてしまっている。
つまり「おそらくトランプ大統領はドルに問題が起きても解決はできないだろう」と市場が考えても何ら不思議はない状態だ。しかし、日本ではこのアメリカの危険な状況は全く認識されていない。メディア報道もこの点が死角になっている。今後特に国内報道を読み込むうえではこの点を意識することが重要だろう。

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