兵庫県知事選挙ではある政治家が特定の議員を名指ししそれが「犬笛」になったとして話題になっていた。民主主義の危機であるとしてメディアでも取り上げられている。
ただ、今のアメリカ合衆国の事例を見ると「もっとひどい状況になるかもしれない」から今のうちに耐性をつけておいたほうがいいのではないかと思える。
実際に警察や軍隊を動かす権限がある大統領が民主党議員に極刑をほのめかしている。民主党議員たちは議会警察に通報したそうである。
このニュースは最初にAxiosで見たのだが、トランプ大統領の発言にうんざりしていたのであえてクリックしなかった。次にABCニュースを見て「ああこれはひどいな」と感じた。
さらにBBCがまとめを出している。
きっかけは軍歴がある民主党議員たちのビデオ投稿だった。必ずしもトランプ大統領の命令に従う必要はないと訴えている。これに腹を立てたトランプ大統領がまず最初のSNS投稿を行う。
その一つでは、「これは最高レベルの反乱扇動行為と呼ばれるものだ。私たちの国に対する反逆者は一人残らず逮捕され、裁判にかけられるべきだ。彼らの発言をそのまま許すなどあってはならない――もはや国を失う!!! 手本を示さなくてはならない」と書いた(編注:太字は原文ではすべて大文字)。
トランプ氏、民主党議員による米兵への呼びかけを扇動行為と非難 「死刑に値する」(BBC)
しかしこれでは気持ちが収まらなかったのだろう。次の投稿はこうなっている。トランプ大統領は司法省やFBIなどの行政執行機関の最高責任者なのだが、いわゆるツイ廃おじさんのような気分になってしまっているようだ。
そして、「これは本当にひどい、そして私たちの国にとって危険だ。彼らの発言をそのまま許してはならない。反逆者の扇動行為だ!!! 収監か???」と続けた。
トランプ氏、民主党議員による米兵への呼びかけを扇動行為と非難 「死刑に値する」(BBC)
これでも満足できずついにこの発言が飛び出した。つまり政敵を名指しして死刑にしろと言ってしまった。SNSで死刑判決を出してしまったのだ。
続けて3個目の投稿では、「反乱扇動行為で、死刑に値する」と記した。
トランプ氏、民主党議員による米兵への呼びかけを扇動行為と非難 「死刑に値する」(BBC)
Axiosの記事は次のようになっている。下院民主党指導者たちはトランプ大統領の死の脅迫のあと議会警察と連絡を取るという意味になる。
日本では兵庫県知事選挙と百条委員会の騒ぎである特定議員に対する攻撃を扇動行為が問題になっていた。メディアの中にはこれを民主主義に対する深刻な脅威と捉えて懸念が高まっている。しかしながら民主主義の本場であるはずのアメリカ合衆国の状況はもはやこんなものではない。
確かにアメリカ合衆国のような先進国では珍しいが中南米などでは言論脅迫だけでなく実際に政治家が殺されるという事例がある。民主主義は暴力的革命とひとつづきになっており極めてグラデーションがある政体である。これまでの日本が平和すぎたと言えるのかもしれない。
ただこうしたエスカレーションを継続的に見ていると「ああこれはしんどいなあ」と感じる。おそらくアメリカ国民はもっと疲弊しているのではないか。
