トランプ大統領がハマスから人質を奪還することに成功した。人質20人はすでに解放された模様だ。ノーベル平和賞が取りたくてたまらないトランプ大統領の執念だけが世界平和を支えているという歪な状況だが、関係国はトランプ大統領を称賛している。いずれにせよ「成果があった」ことだけは確かでこの点は評価しなければならないだろう。
ただしネタニヤフ首相は今回の動きを本音では快く思っていないようだ。トランプ大統領が飽きるのを虎視眈々と狙っている。
トランプ大統領の強い働きかけによってハマスは人質全員20人を解放した。遺体も引き渡すことになっているそうだがこちらは返還が滞っている。遺体の所在がよくわからないそうだ。イスラエルは見返りに終身刑に服している囚人を西岸に解放したという。
おそらくトランプ大統領でなければ解放は実現しなかっただろう。これは明確にトランプ大統領の成果である。
トランプ大統領はクネセトで演説を行い、ヘルツォグ大統領にネタニヤフ首相の「恩赦」を求めている。そもそも恩赦は罪を認めることを意味するがトランプ大統領は恩赦の意味を理解していない。また恩赦の理由として「この紳士が好きだから」と言っている。つまり法律ではなく好き嫌いで罪を認めたり認めなかったりしろとヘルツォグ大統領に要求していることになる。トランプ大統領が法秩序というものを理解していないということがわかる。
ただ、好き嫌いで判断するトランプ大統領だけが和平を実現できるという苦々しい現実があるのも確かだ。
ハマスとの和平が実現するとネタニヤフ首相が戦う理由がなくなるため司法プロセスが再び動き始めることになる。極右が政権を離脱するとネタニヤフ首相の首相の座も危うい。
しかしながらトランプ大統領が「好き」なネタニヤフ首相を通じてアメリカの支援を得続けることができればイスラエルの国際的地位は安泰ということになる。実際に極右が離脱しても野党指導者がネタニヤフ首相に協力するのではないかという観測も出ている。
こうした戦術が極右勢力に評価され、今回の停戦案に従って和平が進んでも政権崩壊を防げるかどうかは不透明だ。しかし、ネタニヤフには「安全網」があると、エツィオンは言う。停戦合意をめぐり極右勢力が政権を離脱した場合、ヤイル・ラピドが率いる最大野党が、ネタニヤフを支持すると表明しているのだ。
アメリカが提案する和平案でネタニヤフの政治生命が終わる可能性…ガザ紛争の行方は？（Newsweek）
こうしてイスラエルで「英雄」となったトランプ大統領はその後エジプトに飛び世界の首脳たちの称賛を浴びながらセンターステージで自分の指導力を誇示した。
このときに「ネタニヤフ首相もエジプトに来るべきだ」と主張した。ネタニヤフ首相はトランプ大統領の働きかけを受けてエジプトのシシ大統領の招待を一旦は受けたが、あとになって「そう言えばユダヤ教の祝日が近い」として招待を断っている。理由になっていないがパーティーを断るときには大人の理由付けが必要だ。
ネタニヤフ首相が本心では今回のディールを快く思っていないことがよく分かるが、ネタニヤフ首相はトランプ大統領が拍手を浴びたことで満足してしまいこの問題に飽きてしまうことを期待しているのかもしれない。所詮個人の名誉欲でガザ地区をおもちゃにしているだけという認識はあながち間違っていないだろう。
一方のガザ地区ではハマスと敵対勢力の戦闘が散発的に行われているようだ。CNNとBBCがそれぞれ記事を書いている。
“トランプ大統領がハマスから人質奪還に成功” への2件のフィードバック
人質20人の解放という成果が得られたことは、率直に良い成果だと思いました。あとは、ガザでの紛争に決着がついて、餓死者がこれ以上増えないことと、適切な医療が受けられることを期待したいですね。ガザでは6万7000人超の死者数がでているようなので、特にそう願います。それまでトランプの興味を失わせないように各国が苦心するのでしょうね。
現時点では、停戦を維持する具体的な対策が何ら示されていないという分析と、イスラエルがガザで発砲を行い死者5名が出たと言う点が語られています。