この話題はどちらから掘ろうかと思ったがニューヨーク株に投資した新NISA組は笑いが止まらないのではないかという書き出しでスタートすることにした。この記事を書いている時点(取引終了直前)でNYダウは+850.67(+1.90%)と大幅上昇だった。アメリカの株式市場はユーフォリア(多幸状態)に包まれているようだ。
ワイオミング州のジャクソンホールで会合が行われパウエル議長が講演を行った。この講演内容が9月の利下げの下準備とみなされたことで株式市場は多幸状態に陥っている。
講演が行われた後で「利下げに向けて前進」という見出しが出たことでニューヨークの株式市場は高騰を始めたが、実際の内容は必ずしも楽観的なものではなかった。
まずアメリカの雇用は移民政策の転換で供給が逼迫しているものの受容も落ち込んでいるとの見通しが示された。この見通しには下振れリスクがある。また関税の影響でインフレが定着する可能性も否定されなかった。
今回の株価上昇はおそらく見出しで売り買いしている人たちの反応によるものなのだが、機関投資家がどのような判断を下すのかはよくわからない。この後でパウエル議長の発言が精査され機関投資家たちの間で意見交換が行われることになる。
日本株への影響は見通せない。ニューヨークの株式市場の好調が続けばそれにつれて上る可能性もある。ただし今回の発言で円が急速に円高方向に動いている。1円43銭の大幅な円高・ドル安だったそうだ。円高は日本の株価にとってはマイナス要因だ。また資金がアメリカに逆流すれば日本株は下落する可能性がある。
今回見出しを「多幸状態」とした。つまり現実を映し出していないのではないか、いずれ下がるのではないかと言う含みがある。しかし、最も恐ろしいのは投資家の予想が当たった場合だろう。成長もインフレも同じことなので投資家はアメリカ合衆国のインフレは長期的には加速すると予想していることになる。つまり短期金利を下げることにより長期金利が上昇するということ。これはアメリカ合衆国の財政にとって極めて厳しい内容であり、ドル通貨の国際的な地位の毀損につながる。
中長期的なシステムクラッシュ予想と目先の好調が同時に存在するため情報の切り分けが重要になってくる。みんなが買っているからという理由でS&Pインデックス投資をしているという人が参加するにはあまりにも不安定な相場ということになり、冒頭の「笑いが止まらないのではないか」には「少なくとも今のうちは」というただし書きが必要なのかもしれない。
