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サウジアラビアが経常赤自国に「転落」

6〜9分

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トランプ大統領が中東を歴訪し投資を呼びかけている。1兆ドルの投資を求めるトランプ大統領に対して皇太子は「応じる」とだけ返事をしたそうだ。実はサウジアラビアは経済構造を変化させようとしておりそのために多額の自国投資が必要になる。中でも最も驚いたのは「サウジアラビアが経常赤字国」となったという記載だった。

黒字はいいことで赤字は悪いことだと考える人が多いと思うのだが、ぜひ一度基本的な知識をおさらいすることをおすすめする。

Bloombergのある記事が次のように書いている。赤字に転落と書かれており「なにか悪いことをした」ような印象がある。

ブルームバーグ・エコノミクスの新興市場担当チーフエコノミスト、ジアド・ダウード氏は「トランプ氏は1兆ドルの投資を求めているが、サウジアラビアは提供できない」と指摘する。ダウード氏はサウジの経常収支が過去1年間で赤字に転落したことを挙げ、「サウジは原油価格が比較的高い水準にあるにもかかわらず資本輸入国となり、これは少なくとも2030年まで続きそうだ。同国と世界経済との関係は、再構築されることになるだろう」との見方を示した。

トランプ氏の中東訪問、サウジからの投資1兆ドルは困難な見通し(Bloomberg)

しかし実際にはアメリカ合衆国の国家収支も「赤字」だ。豊かに見える国なのに「赤字」なのはそれだけ多くの資本(トランプ大統領に言わせれば投資)を受け入れているからである。だから「資本輸入国」と言われる。

サウジアラビアはこれまで稼いだお金に外国からの投資を合わせて都市開発やリゾート開発を行うようだ。また首都リヤドの一角に「アブドラ国王金融地区」を作り金融センター化も進める。つまり、サウジアラビアはアメリカ合衆国のライバルになりつつあるということがわかる。

サウジアラビアにとってトランプ大統領の無知は非常に都合がいい。1980年代のイメージから脱却できておらず投資の意向を仄めかすだけで納得してくれるからだ。

また、トランプ大統領の政策はサウジアラビアのライバルになりそうなベッセント財務長官のウォールストリート派よりもアメリカドルの影響力を弱める「製造業国回帰派」の影響を受けることが多い。これも投資大国を目指すサウジアラビアにとっては好都合かもしれない。

一方の日本の経常黒字は過去最大の30兆円に達した。黒字がいいことであるならば国民経済は大いに潤っているはずだ。

共産党が「困窮者がいるのに政府が何もしてくれない」と言うのは不思議ではないが、今では高市早苗氏までも「困っている人がいるのに何もしないわけにはいかないから、食料品消費税をゼロにすべきだ」と事実上の政権批判を展開している。

103万円の壁の問題で玉木雄一郎氏が「生存権(憲法第25条)」の問題を取り上げたときには無理筋の議論だと思った。だが、今やこの議論が永田町ではメインストリームになりつつある。

今や党内の抵抗勢力を制御できない石破総理と周辺だけが取り残されている状況だ。

共産党が言うように「企業ばかりが儲けている」のが悪いことなのかは人によって意見が分かれるだろう。日本の問題は国民の将来不安ではなくこれまで稼いできたお金の使い方が極めて下手な点にあるのではないか。お金は回ってこそ「活き金」になるのだが日本はこれを「死に金」にしてしまっている。

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