今日はゲーム理論と政治というテーマを扱ったので国内政治については簡単に整理したい。このエントリーではガソリン減税の原資について考える。自民、公明、維新は暫定税を廃止して恒久財源化したいようだ。目を離すとすぐに安易な方向に流れるのは困ったものである。油断も隙もない。
理論的には話を分解して有権者の損得勘定をわかりにくくしようとしていると説明できるが、面倒なことを理解したくない人は「政治家には知恵がなくズルい」程度の理解で構わないと思う。
日本はデフレ的経済からインフレに移行した。REUTERSは「需給ギャップ」がなくなっていると表現している。デフレは終わったので政府が無理やり需要を拡大すると供給制約からインフレが加速する。
日銀が30日の金融政策決定会合で利上げを見送ったこともあり、足元では円安の進行が続く。大規模補正で円安圧力が強まれば、さらなる輸入物価の高騰が家計や中小企業を圧迫しかねない状況とも言える。総務省が31日に発表した10月の東京都区部消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数、コアCPI)は前年比2.8%上昇。水道基本料金無償化の終了という特殊要因はあったものの、伸び率は前月の2.5%から拡大した。内閣府が試算した4―6月期の需給ギャップもほぼゼロだ。
マクロスコープ:「高市補正」へ議論本格化、政府内に大規模化は不可避の声(REUTERS)
しかし、自民党政権は有権者を繋ぎ止めるためにバラマキを続ける必要がある。このため獲得した財源を手放せない。だからバラマキの前提となるデフレという言葉も放棄できない。
一方で成長の恩恵は国民には行き渡らず減税欲求が高まっている。政府が成長戦略を加速させれば加速させるほどインフレが進行する。需要が膨らみ拡張財政で円安が進むからだ。これは良し悪しと言うよりは理論的帰結である。
ただし実務的にはこの問題を切り分けることで議論全体を見えにくくするという手法が考えられる。いわば短期ゲームにしてしまえばいい。このときに利用されるのが政党感の枠組みである。
- 自民・維新
- 自民・維新・公明
- 国民・公明
- 自民・公明・立憲民主
などさまざまな枠組みが場当たり的に作られ全体議論が読みにくくなっている。
国民の間には強い減税要求が広がっており与野党はガソリン暫定税率の話は決めた。年内に実施するそうだ。しかし財源は棚上げになっている。自民党・公明党・維新は別途話し合いを行い「減税の代わりにインフラの整備税を作ってはどうか」と提案。国民民主党の榛葉幹事長が「ガソリンの代わりに自動車に課税するとは本末転倒」と反発していることから自動車系の税金が検討されていることになる。
本来ならばあれこれ分析したいところだが「暫定税率廃止を名目に恒久財源を画策しているのか」と呆れるほかはないと評価するにとどめておきたい。
一方で立憲民主党は食料品消費税減税の1年間限りの減税を提案している。これはおそらく踏み絵であり実現するつもりはないのだろう。
すでにデフレ状態を脱却しているのだからこの先もインフレは続く。つまり1年後にインフレが終わらないということは誰の目にも明らかである。
立憲民主党は1年後に給付付き控除が行われるから食料品の消費税減税はいらなくなると説明しているが、このためには国民所得を副業まで含めて把握する必要がある。おそらく今の国税庁の仕組みでは対応できないため1年位内にこの制度がローンチできる見込みはない。また時事通信によると公金受取口座を登録している人は6300万人しかいないそうなのでこれを前提にした制度設計もできない。なおこの給付尽き公助の枠組みは自公立である。
日本の議院内閣制では過半数を得られない政党は政策に責任を取らなくても済む。このため実現不能なことを主張してもなんとかなってしまうのである。さらに枠組みを巧みに使い分けることによりどの政党も責任を回避しようとしている。
どの政党も思い切った減税は難しいということがわかっており、減税=別の名目の増税になることはわかっている。しかし有権者に恨まれたくないため議論を切り刻んで全体像を誤魔化そうとしている。
しかし理論的構造はわからなくても、なんとなく政治家が何かを誤魔化そうとしているということはわかる。難しいことを理解したくない人は「政治家は油断も隙もない」と理解すればいいだろう。
