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ガザ合意は最終段階とトランプ大統領が主張

6〜9分

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AxiosがExclusive: Trump says Gaza peace deal in “final stages”という独占記事を書いている。ガザ合意は最終段階だという主張だ。現実がわかっていて虚偽の主張をしているのか本当にそう思い込んでいるのかは正直誰にもわからない。

トランプ大統領は合意のためにはアラブ諸国とハマスの協力が必要だとしている。イスラエルがカタールにあるハマスを狙い撃ちにしたことはすっかり忘れてしまっているようだ。そのうえでアメリカ合衆国の提案に従えば地域に平和が戻るとの主張。

ちなみにアメリカ合衆国の構想はガザ地区にブレア元首相を首班とする暫定当地組織を作るというもの。トランプ大統領はガザ地区にリゾート施設を作ることを望んでいる。

そのうえでAxiosはアメリカとイスラエルの間の相違点を次のように記述している。ネタニヤフ首相はエルサレムの「目と鼻の先」にテロリストの政府が作られることは許容できないとしている。そしてネタニヤフ首相によればハマスだけではなくパレスチナ自治政府も「テロリスト」に含まれる。

  • ハマスの武装解除
  • パレスチナ自治政府の役割

一方でハマスは提案は受け取っているもののイスラエルのドーハ攻撃以降は検討を中止していると言っている。

トランプ大統領の「ドクトリン」には一部納得できるところもある。

現在ガザ地区は戦争で荒れ果てている。戦争は単なる破壊にしかつながらない。しかしトランプ大統領が関わればこの土地に新しいリゾート地を作り「経済成長につながる開発」ができるだろう。この考え方自体は間違っていない。

では何が阻害要因になっているのだろうか。

第一にネタニヤフ首相が本気で戦争の終結を目指しているわけではなさそうだという事情がある。数々の汚職疑惑を抱えるネタニヤフ首相は「司法改革」を目指しているがイスラエルが冷静な状況にある間は実現が難しかった。そこで極右と手を組み有事を作り出している。つまりネタニヤフ首相には戦争を長引かせたい動機がある。

しかしそれ以上に各国の思惑が全く一致していないという事情がある。

  • ヨーロッパ
    • ロシアを背景に力による現状変更が認められてしまうとヨーロッパが混乱する可能性が高いため認められないという気持ちがある
    • 第二次世界大戦でユダヤ人を虐殺したという歴史的後ろめたさがある。
  • アラブ圏
    • イスラエルのガザ侵攻を許してしまうと難民がアラブ圏に流入する
    • またガザに封じ込めていた過激分子が域内に戻ってくる国もある

結局のところこの問題が解決していない。ヨーロッパは第二次世界大戦の結果経済的に成功した「勝ち組」なので今の体制を維持したいが、中国やロシアは自分たちが主導してルール書き換えができる世界を作りたい。

アメリカ合衆国が強大な軍事力で地域を押さえつけることも不可能ではないのだろう。しかし、アメリカ国内は格差の拡大で民主主義が混乱している。だから、アメリカが世界の警察官としての役割を果たしてくれるとは期待しないほうが良さそうだ。

トランプ大統領には落とし所が見えているのだろうが、その最後の距離が詰められない。だから結果的に問題は解決しない。

結局のところ、2025年の国連総会はいろいろな意味で「もはや国連が国連としての機能を果たせていない」ということを示すだけの総会になってしまった。

この混乱した状態を解消するためには「もう一度大規模な戦争を行って新しい現状」を作るしかなさそうだが、誰もその提案を受け入れることはないだろう。巻き込まれた国の生活基盤が根こそぎ破壊される上に想定される核戦争を生き残れる保証はない。