9,100人と考えAIとも議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方


エプスタイン・ファイルで浮上したトランプ氏の名前 しかし本当の問題は別にある

8〜13分

イイネと思ったら、Xでこの投稿をシェアしてください

司法省が新しい情報を公開し、ついにトランプ氏がらみの案件が出てきた。要約は時事通信で読めるが、ABCニュースはさらに詳細に報じている。極めて注意深く構成されており「やはり出た!トランプ氏の疑惑」となっていない点が重要だ。正面から扱ってしまうと訴訟リスクが跳ね上がるからだろう。

この記事の趣旨は「やはりトランプ氏は何かに関わっていた」と主張することではない。様々な政治的配慮によって人生を狂わされた少女について考えることにある。つまり本当に取り組むべき問題は一人の人生の救済にあるのではないか。

記事はFBI302報告書と呼ばれる新しい資料が出てきたとするものだ。他の資料ですでに語られていたため、これまで重複扱いになっていたとしている。声明は、なぜ記録が重複とされ、その認識が改められたのかについては説明していない。資料は改訂が重ねられており、複数のバージョンが存在する。

この資料は、検察当局が「エプスタイン氏の危険性」を示すために裁判所へ提出する目的で準備したものだった。しかし結局提出はされなかった。アメリカ合衆国で検察が刑事裁判を起こすときには「大陪審」と呼ばれる機関にあらかじめ資料を提出し、裁判として扱うべきかどうかを判断してもらう必要がある。

エプスタイン氏の弁護士は連邦検察と交渉を重ね、起訴状は大陪審に提出されなかった。結果としてエプスタイン氏は2008年に州の裁判所で「比較的軽い」罪状で有罪判決を受けている。この後も有力者たちはエプスタイン氏と水面下で交流を続け、現在社会問題となっている。

と、ここまで長々と経緯の説明があり、その後でようやく「その一つにトランプ氏の名前が出てくる」と書かれている。

ある女性は13歳から15歳の頃にエプスタイン氏にニュージャージーからニューヨークへ連れて行かれ、トランプ氏を紹介されたという。2019年のインタビューでは、トランプ氏との詳細を明かすことを拒否している。また1980年代の前半から中頃にかけてトランプ氏とエプスタイン氏が接触していたという証拠は出ていない。

広報官のリービット氏は「女性は精神的にひどく不安定であり、多くの犯罪歴を持っている」という理由で、「告発には全く信頼性がない」としている。

しかし、彼女の最後の説明は合理的ではない。

バイデン政権はこの資料を持ちながらもトランプ大統領を告発しなかったとしたうえで、それはトランプ氏が不正行為を行っていないことを知っていたからだと主張する。

確かにトランプ氏なら政敵を陥れるために様々な情報を探すだろう。しかし、バイデン大統領が同じようなマインドセットを持っていたと決めつけることはできない。ゆえに「バイデンが何もしなかったからトランプ氏に問題がなかった」という理屈は成立しない。

しかしリービット氏は「エプスタイン・ファイルの公開によって、トランプ大統領は完全に無罪となりました」と言い張っている。

この女性は当初ベビーシッターとして雇われたが、後にエプスタイン氏から性的虐待を受けたとしている。その後も数回にわたって虐待されたと主張しているそうだ。つまり小学校から中学校に上がったばかりの子どもが、人格形成に重要な時期に女性として過酷な目にあったことになる。「精神的に不安定になっても当然だろう」と感じられる。

にもかかわらずホワイトハウスは「この狂った女性の言うことなど誰が信じるものか」とトランプ氏を守っているのだ。弁論によって作られる心象操作の過酷さがよく分かる。

同時に、この問題はおそらくMAGAを大きく揺さぶるだろう。トランプ大統領のイランへの軍事侵攻はイスラエルによって誘導された可能性が高い。つまりMAGAの一部には「実はトランプ氏も『あちら側』、すなわち富裕層の仲間なのではないか」という疑念が生まれている。

「推定無罪」は法律の原則だが、実際には心象によって大きく左右される。心象が変われば「推定有罪」のような空気が作られる可能性もある。

トランプ氏にはトランプ氏の思惑があり、MAGAは信じたい気持ちと疑いの間で揺れている。政府に許認可権限を握られ、訴訟リスクもあるABCニュースは、この問題を真正面から扱うことができない。これは「政治的に考えれば合理的な判断」なのかもしれない。

しかし、この問題を性的虐待に巻き込まれた少女の物語として見ると、また別の側面が浮かび上がる。人格形成に重要な時期に過酷な経験をし、その後「精神的に不安定になり犯罪を重ねるようになった」とされる女性の物語だ。アメリカの裁判制度は彼女を助けてくれない。そればかりか国家権力に「嘘つきで取るに足らない人物」と決めつけられてしまっている。一人の女性がこれほどまでに過酷な運命を背負わなければならないという理屈は、どうしても考えにくい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です