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ウクライナ問題でロシアの代理人と化したアメリカ合衆国

9〜14分

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AFPが大きな図表でウクライナが諦めることになる領土を示している。ヨーロッパ、カナダ、日本の首脳は会談を行い「領土問題」を織り込んだうえで決着を図ろうとしている。つまり力による現状変更が追認される見通しが高まった。我々の世界は大きく変わろうとしているが、日本人はこの現実を無視しようとして「希望」という名前の不安を抱え込むことになるだろう。

AFPがウクライナが放棄する領土を図にして示している。黄色の地域がそれに当たる。ロシアにとってはウクライナをいつでも攻撃できるぞと示す狙いがある。ウクライナはついでに軍縮を約束させられる。ヨーロッパは対案として前線の固定を目指すと伝えられている。

これまで西側世界が主張してきたクリミア半島併合はロシアの軍事力を背景にして既成事実化しようとしている。力による現状変更が国際社会で受け入れられつつあり、本格的な国連安保理体制の変質と言えるだろう。

アメリカ合衆国は国際協調路線を取らなかった。それに合わせた西側各国は会合を持った。参加国は日本を含めて下記の通り。

協議は南アフリカのヨハネスブルクで開かれた20カ国・地域首脳会議(G20)に合わせて行われ、日本、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、スペイン、オランダ、フィンランド、ノルウェー、欧州連合(EU)の首脳が参加した。

ウクライナ和平案、西側首脳が修正要求 トランプ氏は柔軟性示唆(REUTERS)

これは極めて皮肉だ。ロシアはこれまでNATO・EU体制が東進する現状を苦々しく見ていた。ロシア指導部にとって見れば民主主義は自分たちの既得権を破壊しかねない危険な存在だ。とくにウクライナで起きた民主革命はモスクワの「目と鼻の先」で起きている。プーチン大統領はベルリンの壁崩壊で東ドイツから脱出したあと、ソ連まで崩壊し白タク(無許可タクシー)で稼いでいた時代がある。

ところが今回はウクライナ東部でロシアが「新しく獲得する領土」に怯えることになる。ヨーロッパはけっしてウクライナ市民のために防衛に協力してきたのではない。自分たちの領域がロシアに蹂躙されることを恐れているのである。

トランプ大統領はこれを単なるディールだと考えている。REUTERSによると密かにロシアから特使を呼び出して国務省を排除した形で合意をまとめたそうである。

米国務省や国家安全保障会議(NSC)の高官の多くは、和平案について説明を受けていなかった。

ウクライナ担当のケロッグ特使も、ウィットコフ氏とドミトリエフ氏が主導する協議から外されていたという。国務省のピゴット首席副報道官は、ルビオ長官がウクライナの戦争を終結させるための計画策定の全過程に密接に関与してきたと述べた。

しかしロイターが取材した米政府関係者などはこれに反論。ある政府関係者は、和平案にはルビオ氏が以前拒否した内容が含まれていると述べた。

米の和平案、ウィットコフ氏とクシュナー氏がロ特使と作成=関係筋(REUTERS)

この問題でルビオ国務長官が置かれた環境は非常に複雑だ。今回外されたケロッグ氏は退任したがっていると報道されている。1月に向けて閣僚の入れ替えも検討されているため協議から外されたとしても文句は言えない。

キューバからの移民の息子であるルビオ国務長官は中南米の共産主義政権に敵意を持っている。現在トランプ政権はベネズエラの政権を政策オプションとして検討している。

彼は彼のアジェンダを遂行するためにトランプ政権に残る必要があり「自分はウクライナの意思決定からは外されている」と認めることも「これがロシアのウィッシュリストである」と認めることもできない。ヨーロッパとの交渉に参加し「ロシアのウィッシュリストである」ことを否定し「会議は生産性の高い有意義なものだった」と主張している。

しかし一方でロシアからの意向が強く反映されていることは認めざるを得なかった。Politicoはこれを「距離を置かざるを得なかった」と言っている。

一連の流れから中国やロシアのような専制主義的な国が一方的に現状変更を行っているというこれまで日本社会が慣れ親しんできたお気に入りのストーリーを維持持することは難しいが、おそらくそれは自分たちの物語に耽溺し続けたい日本社会には受け入れられないだろう。彼らは旨に「希望」を抱きつつ不安を抱えたままで日々の「ノイズたるニュース」に向き合い続けることになる。

GEMINIに検索させるとアメリカ合衆国の上院共和党でもミッチ・マコネル氏 (Mitch McConnell)ロジャー・ウィッカー氏 (Roger Wicker)が今回のディールに反対しているとわかる。

「ウィッシュスト」と発言したのはウィッカー氏とのこと。またマコーネル氏はXで「プーチンを宥めることはアメリカの国益に沿わない」と情報発信しており海外だけでなく国内にも波紋が広がる可能性がある。またトランプ大統領がこうした国内の反発を受けて「自分のポジションを修正する」可能性もまだ残されていると言えるだろう。