9,100人と考えAIとも議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方

ドナルド・トランプ政権下の外交は、制度ではなく個人の思いつきで動き始めている。そして日本は、高市早苗政権の下で、その危うい外交に主体性なく追随しつつある。本稿では、その構造的危険性を整理する。

高市政権の発足に伴い、ドナルド・トランプ大統領は「日本の対米投資」について一方的に発表した。定見を持たず、単にアメリカ合衆国に追従する高市政権の姿勢には大きな問題があると、これまで分析してきた。

もっとも、「トランプ大統領には偉大な構想があるはずだ」と考える人もいるだろう。そこで本稿では、トランプ政権の外交政策に焦点を当ててみたい。結論から言えば、産業政策以上に混乱した状況に陥っている。

Reutersは、「焦点:トランプ氏『二正面外交』に批判の声」と題する記事を配信している。アメリカのメディアは二極化が進み、極端な論調が目立つが、ロイターは比較的冷静だ。

記事は、「熟練の外交官であっても、同時にイラン問題とロシア・ウクライナ問題を解決することは困難である」と指摘したうえで、ましてやジャレッド・クシュナー氏とスティーブ・ウィトコフ氏の組み合わせでは、事態収拾は極めて難しいと示唆している。

結果的に2名はまたもやなんの問題も解決できなかった。

ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、Axiosのインタビューで、トランプ政権が東部割譲を迫っているとして、全世界に被害届を提出した。

さらに厄介なのがイラン情勢である。交渉に圧力をかけるため、Axiosのバラク・ラピド記者は「トランプ大統領は戦争に本気だ」と繰り返し伝えている。もはや報道なのか、情報戦の一環なのか、判別がつかない状況だ。

トランプ大統領にとって最大の関心事は、目前の選挙と退任後の「世界的影響力の維持」にあると見られる。ヨーロッパ諸国は、マルコ・ルビオ国務長官の曖昧な立場に冷ややかな視線を向けている。

一方、イランはホルムズ海峡で軍事演習を繰り返し、そのたびに株価や金・原油価格が大きく変動する。

こうした状況から浮かび上がるのは、アメリカは大統領の意志次第で国家権力が容易に私物化されうる体制だという現実である。そして、その私物化がもたらす弊害も明確になりつつある。

指導者による国家権力の私物化は、単に国益を損なうだけではない。これまでアメリカが築いてきた信頼という「資産」を担保に、個人が政治的・経済的利益を得る行為でもある。

さらに、私物化が進めば、本来の統治機能は弱体化する。アメリカが安定と繁栄を維持するためには、欧州との関係維持と中東の安定が不可欠だ。しかし現在、伝統的外交官や国務省中枢は周縁化され、トランプ大統領の縁故関係に基づく「素人同然」の人材が外交を主導している。

アメリカは州と連邦の二重構造を持つため、経済政策では問題が表面化しにくい。また、司法・立法による抑制も一定程度機能している。

しかし外交・安全保障分野では大統領権限が極めて強く、私物化の弊害が最も早く可視化される。

本稿の批判の主眼は、安倍晋三政権路線を継承した高市早苗政権にある。
自らの戦略を持たないまま、私物化が進むアメリカの供給政策に追随すれば、日本の経済政策はさらに不安定化する恐れがある。

かつてのアメリカであれば、ホワイトハウス内部からの「押し返し」が期待できた。第1次トランプ政権には一定のブレーキ役が存在し、日本側も辛うじて対応できていた可能性がある。

しかし第2次政権ではエスタブリッシュメントが排除され、残った関係者も自己保身を優先し、「止めないし、関わらない」姿勢へと転じているようにみえる。ルビオ国務長官の迷走ぶりは見ていて痛々しい。

外交・安全保障分野では私物化がより露骨に進んでいる。高市政権が定見を持たないまま「働いて働いて働いて働いて働いて、ボタンを押しまくる」路線を続ければ、いずれ身動きが取れなくなるか、深刻な形で巻き込まれる可能性が高い。

そして最終的に被害を受けるのは、高市総理本人ではなく、日本の国民なのである。

ここまで「トランプ大統領は経済政策と軍事・安全保障政策」を私物化し、定見なくそれを模倣する安倍・高市路線は危険であるという論を展開してきた。しかしこの記事を読んだ人の中には「え?なんのこと」「証拠が足りないのでは」と驚いた人もいるのではないか。実はその驚きや戸惑いこそが今回の問題の根深さを象徴している。

日本のメディアももちろんトランプ大統領周辺のニュースを伝えることはある。しかしながら、点の描写にとどまりそれを線で結ぶことはない。単にトランプ大統領をメディアが監視すべき批判の対象だと考えていない可能性もあるが「日本が依って立つべき外部参照としてのアメリカ」が壊れていることを直視したくないのかもしれない。これを構造的変化ではなく「やがて回復するかもしれしれない一時的現象」と考えたがっているように見える。

今回参照したREUTERSの記事は、普段アメリカ合衆国の政治ニュースを見ていると違和感を感じない。むしろこれまでのうっすらとした言語化されない違和感をやっと言葉にしてくれたという安心感さえある。しかし実際に交渉が破綻しているわけでも、第三次世界大戦が起きているわけでもないので「そこまでひどい事態になっている」と想像しにくい。

さらに本来アメリカ合衆国の不可逆的変化を検知できるはずの知識層に「うっすらとした無力感」とその反動の「冷笑主義」が広がっているようにみえる。自分たちは戦後一貫してアメリカ合衆国に振り回されてきたという認識を持つ人達が嗜虐的にトランプ大統領が破壊するアメリカの民主主義を面白がっている。あくまでも個人的な感想に過ぎないが「無力感に対する補償なんだろうなあ」と感じる。

安倍政権や高市政権は「力強い言葉」で知られており知的エリートたちも表向きは「自分たちは冷静で動揺していない」ように振る舞っている。さらに第三次世界大戦は起きておらずそこまでひどい事態になっているとも考えにくい。

事態が深刻であれば深刻であるほど「丁重な隠蔽」が行われ、問題が見えにくくなるのである。

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