イーロン・マスク氏が政治献金を大幅に減額する決断をした。おそらくマスク氏にとっては正しい決断だろう。一方で議会対策が正念場であるトランプ大統領は抵抗勢力攻撃のための実弾を失うことになる。その意味ではかなり重要なニュースと言ってよいのではないか。
イーロン・マスク氏はトランプ候補に多額の献金をしてトランプ大統領誕生に大きく貢献した。しかしながら、政権成立後は自由貿易を敵視するナバロ顧問などと対立するようになった。
さらに彼の政治的発言は各地で軋轢を生み出した。ヨーロッパではXを利用する人が1000万人も減っている。またDOGEの人員削減を適しする人々の一部はテスラ社に対するテロ攻撃を起こしている。温厚なことで知られるベッセント財務長官と罵りあったなどとも報道されていた。
マスク氏がテスラ社を放置していることもありテスラ車の製造開発にも問題が起きていた。この事態を重く見たテスラ社の株主たちが騒ぎ始める。取締役会が人材紹介会社にマスク氏の後任探しを依頼したと報道されると、マスク氏は5年後もテスラ社の経営を担うと約束し、代わりに政治から距離を置くことに決めたのだ。
マスク氏は自由奔放な発言で知られる。未来を切り開く力はあるがこれが「現実」に向かうとたちまち炎上する。彼はビジョナリー型の経営者としては優秀だが政治家には向いていない。政治家に必要な共感能力が「ぶっ壊れて」いるからである。
このニュースはトランプ大統領とジョンソン下院議長が進める「大きくて美しい法案」にも大きな影響を与えるだろう。
Axiosはトランプ大統領が「抵抗勢力」に対して圧力をかけていると伝えている。トランプ大統領のSNSを通じた恫喝は「実際に彼が何らかの手段で抵抗勢力の再戦に圧力をかけかねない」という怖れがあって初めて有効なものになる。
一部の共和党議員たちはメディケイドに依存する人々が多い地域から選出されており中間層も大幅減税に強い期待感を示している。有権者の期待がある以上、トランプ大統領は実弾を使って刺客候補を立てて抵抗勢力を潰さざるを得ない。刺客を立てるためには財政的支援が必要だが、その実弾供給元が「今後は支援をやめます」と宣言しているのだ。
