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インドネシアで反政府暴動 主役は麦わらの一味

5〜7分

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先日中国の対日戦勝80周年について書いていてインドネシアで暴動が起きていることを知った。暴動は激化しBloombergによると3人時事通信によると4人の死者が出ているという。ただその原因を調べると他の国とは若干様子が違っている。インフレで生活が苦しくなった末の暴動ではないようだ。さらに街なかではONE PIECEの海賊の旗が振られているという。一体インドネシアで何が起きているのか。

第一生命経済研究所によると、インドネシアでは大統領が変わったばかり。大統領はポピュリズム的な約束を掲げて当選したが財政拡張的な政策が金融市場から嫌われインドネシア売りが加速した。結果的にプラボウォ・インドネシア大統領はポピュリズム的な政策を退潮させる。しかしまとまらない諸政党を惹きつけるために国会議員の住宅補助など待遇改善は維持した。

このため「約束が違う」と一般のインドネシア人たちが騒ぎ出したのだそうだ。

第一生命経済研究所のレポートには「インフレは落ち着いている」と書かれており必ずしも生活苦からデモを起こしたというわけではなさそうである。

デモの参加者の中には漫画ONE PIECEの海賊の旗を掲げるものがいるという。インドネシアは日本に比べると若い国で人口は右肩上がり。義憤に駆られた若い国民が政治に熱心に参加している可能性がある。

もちろん死者が出る暴動を正当化するつもりにはなれない。

だが先日日本の外国人忌避の動きについて仮説を交えて考察したばかりなのでどうしても「おとなしい国と激しい国のどちらが健全なのか」と考えてしまう。

日本でも現役世代の不満は高まっている。しかしおそらく彼らは自分たちの欲求をストレートに表現することはできない。自分の要求を主張することをわがままだと考え相手の要求も押さえつけてしまう縛り合いの文化の影響があるのではないか。こうした文化的背景があると大義を手にした人々の要求は底なしとなる。しかし当初の性質から決して強いものには向かわず弱いものいじめにつながってしまう。

結果的に特定の国の外国人をいじめたり市役所に圧迫的な電話をかけるなど陰湿な外国人排除の動きだけが広がっているが、どれだけ弱いものをいじめても根幹にある自分たちの待遇に対する不満は解消されないだろう。

単に社会を息苦しくするだけである。シルバー民主主義の側も一体有権者が何を望んでいるのかを掴むことができなくなる。自民党では結果的に「誰が悪いのか」と犯人探しだけが進んでおり選挙敗戦の総括ができなくなっている。学習できない組織の末路である。

いずれにせよプラボウォ・インドネシア大統領は9月3日に中国を訪問することを諦めて国内の治安維持対応に専念することになった。有権者の激しい反応があって初めて政治家は対策の重要性について真剣に考えることになる。

“インドネシアで反政府暴動 主役は麦わらの一味” への2件のフィードバック

  1. 細長の野望のアバター
    細長の野望

    今回の記事を読み「弱きを助け強きを挫く」という言葉を思い出しました。この言葉は死語なんだなと感じます。
    本来、陰謀論というのは政府などの「強くて強大」な存在に対して向けられるものだと思っていましたが、現在では一般的には立場の弱い人たちに向けられる点が、人々が疲弊していて強い者たちへの抵抗力が落ちてしまったんだなと感じさせます。

    ※記事とはあまり関係ない蛇足
    「デモの参加者の中には漫画ONE PIECEの海賊の旗を掲げるものがいる」というニュースを聞いて、私はある日本のニュースを思い出しました。
    漫画ONE PIECEの海軍の来ているコートに「正義」が書かれており、海上自衛隊がそれと同じように「正義」と書かれたTシャツ着て隊列を組む写真をTwitter上に掲載していました。ONE PIECに出てくる海軍は、”正義”のために非道な行いをしており、それを知っていてやっているのか、それとも「海軍」という字面だけで言葉通りの「正義」を実行している組織だと思っていたのかはわかりません。まぁ。デモ側が「海賊」を掲げ、抑える側が「海軍」を掲げている点は、漫画の通りなので現実とのリンクが意外とあるんだなと思いました。

    1. 地方議会に火をつけるのはやりすぎだと思いますがインドネシア、議員に対する高額手当を廃止-抗議デモの収束目指すで示される通り政府は高額手当を廃止するそうです。議員たちもなかなか反対しにくいでしょう。