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アメリカ雇用統計は市場予測より悪化

6〜9分

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アメリカ合衆国で雇用統計が発表された。市場予測よりも悪い内容だった。本来金利引下げを妨げる障害が取り除かれたということになるはずだが一時NYダウもナスダックも下げる展開となった。ナスダックは概ね前日並に戻ったがNYダウはやや下げて終わっている。これまで過熱気味の景気が沈静化すると見られていたが景気減速懸念が生じていることがわかる。

ニュースとしては「米雇用者数、2.2万人増にとどまる-失業率は2021年以来の高水準」ということになっている。市場の予測より雇用者数は増えなかったもののまだ純増であり安心という内容。労働市場が過熱すればFRBが金利を引き下げられなくなるのではないかとの懸念があったのだから株価は上昇しても良いはずだ。だがそうならなかった。

懸念すべき背景が2つある。1つは統計の信頼性の問題だ。トランプ大統領は季節調整で統計が大きく変わったことを「政治的」と考えて労働統計の責任者を更迭した。

実は今回も修正が行われており6月は純減になっている。雇用の伸びは明らかに4月以降に鈍っておりトランプ関税の影響であるということがわかる。しかし今回は7月になり大幅に回復している。このため「そもそも雇用統計を信じていいものか」という疑義が生じているのだ。

次にアウトプレースメント会社(どうやらアメリカにはリストラで余剰になった人員に仕事を斡旋する「リストラ支援業」があるようだ)の業績が伸びている。つまり人員削減が進んでいる。公式の雇用統計が信頼できなくなったため民間の数字に注目が集まっているのである。

ただし利下げは既定路線ではないようで、関税政策によるインフレを重視するのか雇用を重視するのかで激しい議論も予想されるそうだ。

労働市場が悪化しているのに関税による影響で物価が上昇すると「物価を抑えるのか労働市場を救うのか」という究極のトロッコ問題が持ち上がる。このため一部の理事は来週のCPIを見ないとFOMCで意思決定はできないと表明している。

つまり、トランプ政権の関税政策の影響で賃金上昇を伴わないスタグフレーションの可能性が高まっているということになる。スタグフレーション下では中央銀行はすべての人々を救うことはできない。本来それはアメリカ政府の仕事である。

すでに日米投資合意のエントリーで述べたようにトランプ政権が資金繰りに行き詰ると代替財源として日本をATM代わりに利用したいという欲求が生まれる。日本がアメリカの要求する資金を用立てることができないと「自動車部品産業などの壊滅」につながる大統領令の変更が行われることになる。一部では玉砕解散まで画策していると囁かれる石破総理の延命のための覚書によって日本経済とアメリカ経済はますます一蓮托生になりつつあるということだ。

こんな事にならないようにアメリカ経済はいつまでも好調であってもらいたいが、永遠に続く景気拡大などありえないのもまた確かなことであろう。

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