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アメリカ国民はトランプ大統領にうんざりして民主社会主義者を選んだのか?

8〜12分

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トランプ大統領就任後初の大型地方選挙が行われいずれも民主党が圧勝した。日本のメディアを見ると「トランプ大統領にノー」という雰囲気の報道が多かったが、実際にはそうなっていない。

ただしこのままトランプ大統領が意地になると共和党に取って逆風になる。実はこの状況が日本にとって最も面倒くさい。

問題が起きてから情報収集をしても混乱するだけなので、事前に情報を整理しておきたいところだ。

出口調査の結果が徐々に出揃ってきた。今回はABCニュースAxiosBloombergBBCの情報を集めた。日本語で読みたい人はBloombergとBBCを読むとよいだろう。

ニューヨーク州の問題は明らかに不動産価格と言うローカルイシューだった。つまり全国展開はできそうにない。しかし今回の勝利で民主社会主義者たちは色めき立っており妥協が難しい状況が生まれている。民主党の下院のリーダーであるジェフリーズ院内総務の地盤でもあるそうなので下院民主党の政策にも一定の影響があるのかもしれない。

ニュージャージー州では減税に注目する人(共和党支持者)と経済対策=インフレ抑制に注目する人(民主党支持者)で対応が分かれた。

ワシントンDCに隣接するバージニア州では北部を中心に民主党化が進んでおり経済対策=インフレ抑制に注目した人が多かったようだ。

つまり、トランプ大統領と共和党が主導する連邦政府閉鎖は共和党にとって追い風にはならなかったが、かといって民主党そのものが支持されたわけではないという状態になっている。

ABCニュースの内部にはおそらく多様性支持者が多いはずだ。キャスターの中に性的自認を公表し本を出している人も多い。メインキャスターは白人男性だがレポーターやサブキャスターには女性やマイノリティが多く起用されている。このためこの問題をトランプ大統領と結びつけ、多様性の象徴であるマムダニ氏を支援したいという気持ちが強いようだ。

例えば「経済問題はいかにして赤から青の問題になったのか?」というタイトルはかなりミスリーディング。あたかも今回投票した有権者の多くが「経済問題を民主党(青)が解決してくれる問題とみなすようになった」と誤解してしまいそうになる。

Bloombergの記事によると民主社会主義者のマムダニ氏が実際に市長になったことで富裕層の掌返しが始まっている。投票動向を見ると富裕層が多いところほどクオモ氏への投票が多かったが、下町エリアを中心にマムダニ氏が多くの票を獲得した。

マムダニ氏はこれがあたかも全米の移民やマイノリティ全体の声のように「トランプ聞いているか!」とトランプ大統領を挑発して見せているが、実際には不動産価格の高騰によってニューヨークに住めなくなるかもしれないと考える人達の票を集めたに過ぎない。

こうした派手なパフォーマンスはいかにもラッパー経験者らしいところだが下手をすれば「青いトランプ」になりかねない危険をはらんでいる。

ではこの選挙は中間選挙にどのような影響を与えるのだろうか。

すでに民主党の中では穏健な左派と急進左派の間で争いが起き始めている。とにかく今回の勝利に対する高揚感が強い。ハリス敗戦後に意気消沈していた民主党にとっては朗報だが高揚が行き過ぎると緩みにつながり内部崩壊を招きかねないという危うさがある。

共和党に取って気がかりなのはトランプ大統領の動向だ。今回の選挙結果を冷静に判断すれば「対決姿勢を貫くことは共和党にとって有利に働かない」と気づきそうなものである。しかし現在最高裁判所で関税問題が審理されている。ここでトランプ大統領が拒否されてしまうと「自分が否定された」と考えるトランプ大統領がより過激な候補者を中間選挙で擁立しかねない。おそらく穏健な右派はトランプ大統領を支持しなくなるだろう。

次回の中間選挙において、下院で民主党が有利になっても上院の奪還が難しい。上院ではすべての議席が改選されるわけではない。

よく韓国では内政が行き詰ると「反日カード」が出てくると言われる。実はアメリカ合衆国も弱い同盟国である日本に無理難題を突きつける傾向がある。オバマ大統領時代に議会のねじれが発生したときには「集団的自衛権の行使容認」について圧力がかかっていた可能性が高い。またレーガン政権時代も議会からの圧力が強まった事例があったようだ。

つまりトランプ大統領が意地になって自滅した結果議会がねじれると日本に対して無理難題を突きつけてくる可能性が高いのである。