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やはり高市総理の一存だった台湾有事発言

8〜13分

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かつて安倍総理を支持し高市早苗総理に期待を寄せる支持者たちは台湾有事発言後の騒ぎを見て「あれは朝日新聞が悪い」「立憲民主党の岡田克也が悪い」と騒いでいた。しかし辻元清美議員から「あの発言は高市総理の一存だった」というエビデンスが出てきた。

REUTERSは次のように伝えている。

辻元氏によると、内閣官房の担当者らは「質問要旨」を受け取った後、岡田氏を訪ねて質問予定の内容を口頭で聞き取る「問取り」を実施。岡田氏は中国による台湾の海上封鎖について高市氏が触れた過去の発言を引き合いに「最終的に海上封鎖がどのようになった場合に存立危機事態になり得るのか」「存立危機事態の認定の可能性を軽々に言うのはいかがなものか」などと問う予定であることを伝えた。岡田氏の事務所はロイターの取材に、「問取り」が予算委2日前の11月5日にあったと説明した。

台湾巡る高市氏の国会質疑、政府が事前に「問取り」 立憲は首相の責任指摘(REUTERS)

このことから2つのことがわかる。1つは高市総理の発言は総理の「個人的な」見解だったという点。つまり発言の責任は高市総理自身にある。

立憲民主党としては

  • 日本政府の総意ではなく高市総理の個人的な見解ということにして将来の中国の反発を避けたい
  • 「答弁を引き出した岡田克也氏が悪い」という世間の批判に対抗したい

ということろだろう。

当然中国も高市総理を必要としており対外的には意味がない議論だ。

ここでもう一つわかることがある。それが外務省の反発だ。外務省には「高市総理を守って公表しない」という選択肢があった。安倍総理時代には政権の不利な発言はあまり出てこなかった。

しかし今回は「自分たちは万全の準備をして臨んだのだから悪いのは我々ではない」と責任回避するほうが優先順位が高いと考えたようだ。彼らは高市政権を守らなかったのだ。

外務省の動機は常に自己(組織)保身だ。そのゴールを実現するためには政権を守って結果的に政権内での地位を安定させるという戦略と「世論」に向かって「我々は準備したのに高市総理が勝手に発言した」と申開きをする戦略がある。

外務省が選んだのは「世間に対する申し開き」だった。組織防衛となると彼らはオブジェクティブを明確にした「戦略的な」動きができるのである。

こうした自己保身の動きはかつてあった総務省(放送・通信部門)と高市総理の間の緊張に似ている。

  • 2023年に小西洋之参議院議員は総務省の職員から提供を受けたとする内部文書を公開
    • 礒崎陽輔総理補佐官が総務省幹部に対し、放送法の「政治的公平」の解釈を、従来の「番組全体」から「一つの番組」でも判断できるように変更するよう強く迫る内容で高市総務大臣もレクチャー時に前向き(つまり磯崎氏に親和的)だった
  • 高市総務大臣が「捏造」を主張したため、小西氏は調査を要求
    • 文書は本物だが
    • レクチャーがあったかどうかは曖昧

この一連の事件は放送を所管する立場にあった桜井俊氏が「官邸サイドに抵抗して放送法を守った」と示す狙いがあった可能性が高い。2023年当時の桜井俊氏はすでに職を離れているのだから「個人的立場」を守ろうとしたと言うよりは、総務省の中にある放送行政を所管する人たちの立場を代表していたと言ってよいだろう。

ただし当時は「これは総務省にいる通信系と自治系の権力闘争だ」などと官僚出身者が議論を矮小化する動きがあったが、実は官僚と官邸の関係破綻だったわけだ。

この2つの事例は高市早苗さんという個人が必ずしも官僚を掌握しきれていないことを意味しているといえるだろう。

新しい動きとして、高市内閣では「財務省系」と「経産省系」がまるで2つの頭を持ったヘビのような別々の動きを見せている。

REUTERSの「マクロスコープ:政府の成長戦略会議、分科会でも積極財政派起用の動き 「城内氏中心に」」によると高市総理自身は財務省の見立てに傾いているようだが、城内実氏を中心にアベノミクス継続を狙う積極財政派を引き入れようとする動きがあるそうだ。

この記事にも、内閣官房関係者という曖昧な人がでてくる。政府内に異なる2つの勢力があり「進むべき方向が一致していない」とほのめかしているのだ。

ただ、ここにきて分科会メンバーの選定に政府内から懸念の声が出ている。内閣官房関係者は「城内氏が積極財政派の有識者を分科会メンバーに入れようと躍起になっている」と明かす。

マクロスコープ:政府の成長戦略会議、分科会でも積極財政派起用の動き 「城内氏中心に」(REUTERS)

国民の「変わりたくない」という要望を反映し高市総理の国民人気は高い。しかしその足元では確実な変化が生まれ始めている。

立憲民主党は「自分たちは悪くない」と証明できればそれで良いのだろうが、内部に生じ始めた亀裂が大きな損害を生まないようにマネジメントを強化する方向で監視を強めるべきだろう。

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