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また読み間違えた石破総理 ウクライナ和平交渉で

7〜10分

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石破総理がまた読み間違えた。この読み間違いは日本の将来に大きな禍根を残すのかもしれない。石破総理もこれに気がついているようだがもはや党内議論を換気できる政治的な余力はない。

話の起点はトランプ大統領の「習近平氏は私の在任中は台湾を侵攻しない」という発言である。ロシアのちからによる現状変更を追認したばかりか共和党タカ派や軍部が主張する2027年までに中国は台湾侵攻を行うという主張は表立って展開しにくくなる。

日本にとっては大いに禍根が残る展開なのだ。

Bloombergがトランプ大統領の発言を記事にしている。背景はよくわからないがトランプ大統領が軍事的に中国を脅威とみなさないというサインになっている。中国を敵視するマーク・ルビオ国務長官など共和党タカ派と軍部はかなり動きにくくなるだろう。

何があったのか。

トランプ大統領の発言はトランプワールドを「事実」とみなしその事実を軸に事実の解釈が変わってゆく。そしてそれは日替わりである。

ノーベル平和賞が取りたいトランプ大統領はロシアとの和平交渉を推進している。ヨーロッパの国の中にも「アメリカ合衆国が枠組みから抜けてしまうくらいなら和平をまとめてしまおう」という空気が広がり始めている。ウクライナにドンバスを諦めさせてウクライナを東西に分割するという案が出ている。

今後協議は朝鮮半島化したウクライナをどう管理するかという問題に関心が集まる。ロシアはNATOの関与には反対しているが「NATOのような」枠組みについては反対しないのではないかという説がある。ロシアはここに中国を加えるように要請している。

アメリカ・ヨーロッパVSロシアと言う構図はロシアにとっては不利である。そこで「ロシアサイド」に中国を引き入れたい。ヨーロッパもアメリカが自分たちから離れるくらいならこの和平の枠組みを考慮してもいいと考えるだろう。つまり国連の外に国連のような平和維持の枠組みが作られつつある。軍隊を持たない日本はこの枠組みに参加できないため経済的貢献で食い込むしかないが、おそらく現在の国内情勢を見ていると追加支出の余裕はないだろう。

国連の安全保障理事会体制が崩壊しつつある中で、新しい枠組みの構築が強く求められている。ウクライナの領土を犠牲にして国連に代わる実効性のある枠組みの実験体が作られつつあると考えるべきなのかもしれない。新しい枠組みの要諦は「力による現状変更」の容認であり、新列強による勢力線の一方的な確定だ。

形式的にウクライナを納得させればみんなが(暫くの間は)丸く収まる。

石破総理も事前協議の席に呼ばれた。時事通信によれば「インド太平洋に禍根を残さないように連携してゆく」と表明したそうだ。そもそも力による現状変更が容認されつつあるうえに、実際に台湾問題が動いてもトランプ大統領はおそらく何もしないだろう。

すでに禍根を残す形で議論が始まっていると言って良い。

おそらく石破総理は力による現状が国際社会で認められつつありこれがインド太平洋情勢に影響を与えることまではわかっているのだろう。しかし、自民党内ではムラ的な次のリーダー選びの議論が始まっている。石破総理が国内的な議論を喚起することはないだろう。日本は内政的な事情から国際情勢の変化を指を加えて眺めることになりそうだ。

普段の政治議論では「戦争の戦略的な意味合い」や「国家像」など大きなことを語りたがる人は多い。今回の決定的で明白な変化については誰も何も言っていない。日本人に取っては透明な領域なのかもしれない。この主体性のなさが日本の国家像・国家観議論を空疎なものにしている・