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なんだ財源なんかいらないんじゃないか 暫定税率の財源問題が先送り

10〜16分

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高市総理がアベノミクスを継承した時点で「いつか詰んでしまう」ことは明らかだった。

案の定、財源問題が罰ゲーム化している。高市総理の性格と人選に起因するこの問題は今後も高市政権の首をじわじわと締める方向に進んでゆくだろう。少なくとも政権が成長戦略を打ち出す2026年の夏まではこうした状況が続く。

早期に路線修正しない限り高市氏の最大のミッションはこの「詰んでしまう日」を先延ばし続けることになるだろう。

有権者が成長戦略に期待しなくなり、関心は減税と物価高対策(要するに政府の財政支援)に集まっている。さらに高市総理が成長戦略があるから税率はあげない=増税しないと主張したことで更に増税議論が難しくなった。

政治家が頑張っても国民がその気にならなければ経済は成長しない。今の政治家はその基本を忘れているようだ。

結果的に財源などの負担を提案した人が負けというなんだかよくわからないゲームが展開している。もともと暫定税率をインフラ整備税として恒久化する戦略だったようだが結論は先延ばしされた。年内に結論を得たいとしているようだがおそらく出ないのではないか。

6党合意では、代替財源について、歳出削減や法人向けの租税特別措置(租特)の縮小、高所得者の税負担の強化を検討し、年末までに結論を出すとした。これに加え、道路などの維持管理や老朽化対策に影響が出ないよう、今後1年程度かけて安定財源の具体策を検討する。

財源確保、結論1年先送り ガソリン暫定税率12月末廃止―与野党6党

そもそも高市政権の成長戦略には2つの問題がある。

1つはギャンブル性が強く投入資金をすべて失ってしまう可能性があるという点。ギャンブルという割には機動力に欠ける。2026年の夏まで結論が出ない。

もう1つはアメリカの要求に従って軍事力を「日本が自発的に」上げると言わされている点。小林鷹之氏の苦しい質問は「日本が軍事的にも強くなれば国際ルールを決める力がつき経済的にも優位になる」との無理筋の主張が含まれているが、銃で脅してデファクトスタンダードが取れるならトランプ大統領も苦労しないだろう。

成長戦略の策定が終わったとしてもすぐに賃金に反映されるわけではない。つまりその間は何らかのつなぎが必要になる。

高市政権の2年間は「好循環」が起こらない可能性が高いが、インフレの影響で税収が上がっているためおそらく代替財源には困らない。結果的に「なんだ代替財源などなくても減税はできるんじゃないか」と理解されることになるだろう。ただしこの戦略では地方の衰退を食い止めるためのインフラ整備を難しくなる。

地方の衰退を巡っては足元でかなり複雑なことが起きている。里山防衛に失敗しクマの住宅地侵入を許してしまったというのはその最たる例。

日本でも経済成長が再開し需給ギャップが埋まりつつある。

ここに過剰な投資を入れるとインフラが加速するが、過剰な投資を入れなくても経済縮小で供給能力が落ち込むことが予想される。日本の人口は1年で90万人減少した。これは小さな県が丸ごとなくなるくらいの大きな欠損だ。自民党政権はこれを外国人労働力で補おうとしており同じ年に外国人が35万人増えている。

植田日銀総裁はこの労働供給力制約が賃金上昇圧力になるだろうと予想している。ジャクソンホールでの講演を記憶している人も多いはずだ。

経団連もこれを懸念しており「働きたい改革」を打ち出していた。ところがここに横槍が入る。高市総理(当時総裁)が突然「ワークライフランスを捨てます」と言い放った。当然これは「私が」だが世間はそう受け取らなかった。世論の反発を恐れた経団連は春闘で働きたい改革を前面に押し出すのをやめたようだ。

高市総理は岸田内閣時代にも総務省の文書を捏造と言い放ち「捏造でなければ議員を辞める」と啖呵を切った。この文書が野党議員によってリークされた経緯は不明だが総務省時代に高市大臣を快く思っていなかった人がいたことは明白である。

国民どころか部下をその気にさせるのも難しいようだ。

労働力供給問題もクマ被害で可視化された地方の荒廃も待ったなしの課題だが有効な対策が打ち出せていない。労働力問題を解決するためにはパート従業員(これまで労働力に組み込まれていかなった女性や高齢者)にいかに機嫌よく働いてもらえるかが鍵になる。

実は国民民主党の玉木雄一郎代表はこの点をわきまえており継続的なメッセージを打ち出している。しかし、高市氏が選んだのは国民民主党ではなく何かと問題が多い維新だった。

労働投入を増やすためには、まず、人手不足を解消する必要があります。そこで、国民民主党は、働き控えをなくすために「年収の壁」の引き上げを提案しました。それが第一の矢、「手取りを増やす」です。次に、第二の矢として、投資を増やすために、 投資額以上の減価償却を認め、企業が投資すればするほど得する「ハイパー償却税制」を提案しています。そして、第三の矢として、イノベーションを起こし、日本経済全体の生産性を向上させるために、教育・科学技術予算の倍増を訴えています。名目GDPが1,000兆円になれば、税収は120兆円程度になると見込まれ、財政も健全化します。高市内閣には、国民民主党の掲げる「新・三本の矢」も取り入れた新たな経済成長戦略を立てるべきだと考えますが、高市総理の考えをお聞きします。

【衆本会議】玉木代表が高市総理の所信表明演説に対する代表質問で登壇(国民民主党)

結局、労働者は「自分の手取りが上がるんだ」という実感が持てなければ政策には協力してくれない。結果的に財源を言い出しただけでその政党が選挙で懲罰を受けるという罰ゲーム状態が作り出されている。

高市政権にはいろいろな課題があるが「相手の協力を得るためにどのようなメッセージングを選択するか」という知恵に乏しく、力づくで政策を押し出そうとする傾向がある。これがやたらと「強さ」を打ち出す姿勢に現れているのだろうが、この姿勢を改めない限り、早晩「詰んで」しまうだろう。