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ついに始まった トランプ政権が「極左との戦い」に乗り出す

10〜15分

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アメリカ合衆国には2つの固有の問題がある。まず、自衛を必要とする開拓国家であり銃が手放せない。次に資本主義は勝者と敗者を作り出す。この2つ問題がついにティッピングポイントを迎えてしまったようだ。政府による左翼刈りが始まった。大統領は組織的な左翼運動の調査に乗り出し、副大統領は「極左」を雇用主に報告せよと訴えている。

きっかけはチャーリー・カーク事件だった。容疑者はネット言論に刺激されており政治的な思想の整理はされていないと見られている。そもそもまだ公には何も語っていない。

にも関わらず行政府の側から相次いで今回の犯罪は過激な左派による犯行であるとの見解が示されている。

きっかけはトランプ大統領の発言だった。その後も相次いで同様のコメントが寄せられている。日本の法務大臣に当たるボンディ司法長官はチャーリー・カーク氏は極左に殺されたと断定したうえでトランプ大統領のお陰で死刑への道が開かれたと主張した。

本来ならば三権分立と国民が裁判を受ける権利を引き合いに出して批判されるべき発言だろう。もちろんこうした批判はあるが分断された言論空間では相対化されてしまう。

おそらく、これは民主党を極左と決めつけたうえで政治的弾圧を加えるためのきっかけに作りに過ぎない。トランプ大統領は極右が民主党系の政治家を狙っている事実には沈黙を貫き、共和党に対する攻撃だけを非難し続けている。また実際に過激な左派の実態を解明すべく大規模調査に乗り出すことになった。

バンス副大統領はチャーリー・カーク・ショーの臨時ホストを引き受け「不適切発言」をする人々を監視し雇用主に報告せよと呼びかけた。

こうした攻撃性は国内だけではなく国外にも向けられている。トランプ大統領はすでに反米左翼政権のベネズエラに対して攻撃を仕掛けた。小舟を二度にわたって攻撃しベネズエラ政府がアメリカ合衆国を攻撃していると主張するがなんら証拠は示さない。

ルビオ国務長官は次のように主張する。実際には単なる漁船を攻撃しているだけんなのかもしれないがアメリカ合衆国が100%さえすれば何をやってもいいというのである。

一方、ルビオ米国務長官は同日、乗組員11人全員が死亡したヴェネズエラからの船への1回目の攻撃について、この船がアメリカへの密売に関与していたことを「100%確信」していると主張した。

アメリカ、再びヴェネズエラの船を破壊し3人殺害 麻薬を運搬と主張(BBC)

行政府が認定すればそれが事実になるという考え方は専制主義国家ではさほど珍しいものではない。またアメリカが属する西半球には大統領権限が強い独裁国家も多い。その意味ではアメリカ合衆国はこうしたありふれた国々の一つになろうとしているだけといえるのかもしれない。

もちろん最高裁判所の判事の中には「大統領と王は違う」と認識する人もいるがもはや少数派。REUTERSは多くのアメリカ人が大統領権限の拡大に不安を感じているとの調査結果を公表しているが、共和党支持者たちは大統領の行為を正当なものと考える傾向が強いそうだ。

とにかくアメリカ合衆国では激しい分極化が進んでおり政治的暴力は1960年以来の高い水準になっている。Bloombergの記事は分極化が政治的暴力の急増を作り出しているとはいっているが、そもそもなぜ分極化が起きたのかについては語っていない。

背景の一つと考えられるのが格差の拡大だ。アメリカ合衆国では物価高が続いているのだが株価は好調に推移している。Bloombergが記事を2つ書いている。物価高が続いているにも関わらず消費が好調だ。しかし上位10%が49%の消費を支えるいびつな構造が生まれている。

Bloombergは富裕層が何らかの理由で消費をやめるとアメリカの経済状況はたちまち悪化するのではないかとの懸念を示している。現在は金利引下げ期待から株価が上昇しているにすぎないと考えると、実際に金利が確定した後に調整局面に入るだろうことは間違いがない。富裕層が消費を辞めるかどうかは別にして、大きく下がる株とあまり下がらない株の選別は進むかもしれない。

そもそも消費生活から排除される人たちが大勢出てきている。彼らが富裕層がこれみよがしに消費する姿をSNSなどで見せられて面白く思うはずもない。嫉妬と怒りはどこかに捌け口を求めるだろう。

今回さまざまな報道を読んだが、実際に左派のほうが政治的暴力に肯定的な意見を述べることが多いという報道もあった。左派・リベラルには大きく分けて理知的な理想主義者とは別の人達がいる。反アベ運動を観察している限り「汚いものを生活圏から排除したい」という本能に根ざした「サニタリー信仰」に突き動かされた発言を繰り返す人も多かった。

チャーリー・カーク事件の容疑者とされているタイラー・ロビンソンの言動は右派や左派の言動が入り混じり発酵した言論空間の影響を受けていた可能性が高い。

しかしながら一度ティッピングポイント(沸点)を超えてしまうと構造解析も合理的な理由付けにも何ら意味はなくなってしまう。

結果的にアメリカ合衆国で暮らす人やアメリカ合衆国年ごとをしている人はSNSでの言論に気をつけ沈黙を貫くべきだとしか言えなくなる。つまりこれは中国共産党の支配下にある人々に言論の自由がないのと同じ状況だが「良い悪い」ではなく「現実的な対処」が必要になるのだ。

驚くべきなのはトランプ大統領が大統領に就任したのが2025年の1月だったということ。わずか半年強でアメリカの民主主義は大きく変容してしまった。

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Comments

“ついに始まった トランプ政権が「極左との戦い」に乗り出す” への2件のフィードバック

  1. 信濃太郎のアバター
    信濃太郎

    「驚くべきなのはトランプ大統領が大統領に就任したのが2025年の1月だったということ。わずか半年強でアメリカの民主主義は大きく変容してしまった。」

    それほど驚くには当たりません。ナチス党も政権をタナボタ的に獲得した1933年1月から、いわゆる強制的同一化(Gleichschaltung グライヒシャルトゥング)が完成するまでに9か月を要したわけで、だいたい同じペースなのではないかと。

    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%B7%E5%88%B6%E7%9A%84%E5%90%8C%E4%B8%80%E5%8C%96

    むしろ驚くべきは、いま起きている地殻変動が2017年に起きなかったことの方ではないでしょうか。第一次トランプ政権では無為に4年間を空費し、再選を逃したのですから。

    後世の史家は、コロナ禍による社会変容など他の要素が加わって米国版グライヒシャルトゥングが2025年にようやく完成した、と評するのかも知れません。

    1. ドイツ的父権主義を背景に・父親に絶対的承認が得られなかった子どもが・挫折の末にマインカンプを完成させ・相対的剥奪感を持った人たちと呼応し・社会を破壊するという類型ですよね。なので大統領選挙敗戦がなければ起こらなかったと考えると、まあ説明は付きますよね。これが正しいかはまた別の話で今後の展開を見る必要があると思いますが、渦中にいる人達は「経過観察」などと悠長なことは言っていられないのかも……