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ついに「ベッセント財務長官解任論」まで 混迷するアメリカの金融政策

7〜10分

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別のエントリーで高市総理の経済政策は日本を幸せにしない可能性が高いと書いた。高市総理は(おそらくは無意識に)日本経済の底上げに抜本的な対策を講じずアメリカ経済への従属化を進めている。仮にアメリカ経済が好調であればそれはそれでも構わないと言えるのだろうがそうなっていない。ついにトランプ大統領によるベッセント財務長官解任論まで飛び出した。

NVIDIAの決算が好調だった。しかしFOMCの議事録が公表され労働統計の内容が「なんとも言えない」ものだったためその後株価が下がっている。NVIDIAだけではなくハイテク株全体に余波が及んでいるようだが、NDIVIA株は195ドルだった株が181ドルまで下がるなど特に不安定な値動きとなっている。

冷静になって考えると「そもそもFRBがアメリカ合衆国の経済問題をすべて解決するような回答を出すのは不可能」ということがわかる。アメリカ経済は富裕層経済と一般経済に大きく分離している。金融緩和の恩恵を受けるのは富裕層だけで一般国民にとっては単にインフレになる。FOXニュースの世論調査ではトランプ大統領の支持率が過去最低になった。インフレの影響を受けて暮らしに余裕がなくなったと感じる人が増えているようだ。

この問題を解決するためにはFRBとトランプ政権が協調姿勢を取ることが重要だ。FRBは経済を安定させ、トランプ政権は格差の縮小に向けて継続的な支援を行うべきである。

だがそうなっていない。そもそもトランプ大統領が経済を理解できていない。

経済の余裕の(Affordability)問題が選挙の争点になったことでトランプ大統領は「2000ドルの関税配当」を小切手にして配ると主張した。小切手配布のためには多額の事務手数料がかかるものと考えられており、上院共和党も「関税収入は赤字削減に使うべき」との考え。

もちろんバラマキにはインフレ加速効果がある。ベッセント財務長官はインフレ懸念について指摘されると「子供の将来のために貯蓄してほしい」と説明しているそうだ。これはFOXニュースがトランプ大統領の経済政策を疑い始めていることを意味している。ベッセント財務長官は、トランプ大統領の突拍子もない政策ではインフレになりますねとは言わずに、政府支援が入った「トランプ口座」なるものにお金を預けてほしいと説明しFOXニュースの懸念を和らげようとした。

どうやらトランプ大統領は「とにかくお金を沢山配れば経済は良くなる」という考え方に固執しているようである。

一方のFRBは連邦政府の助けなしには自分たちの政策が富裕層や資産を持っている人たちにのみ恩恵があり一般層には悪影響が及ぶことがわかっている。また連邦政府閉鎖の影響で十分な経済指標が得られない。このため身動きが取れなくなっているようだ。

ところがこれに腹を立てたトランプ大統領は再びパウエル議長を解任する、すぐに新しい議長を発表すると言って議長に今すぐ金利を引き下げるようにと迫っている。パウエル解任を喚き散らすというのはこれまでも見られた行動だった。今回はついに金利が今すぐ引き下げられなければベッセント財務長官を更迭すると踏み込んだ。

別のエントリーで高市総理の政策は無意識のうちに日本経済をアメリカの従属変数化していると書いた。なんとなく高市政権の政策自体がインフレを加速しそうだと言うことは理解されていると思う。

一方でアメリカ経済そのものがかなり不安定化しているという事情はまだあまり知られていないのではないかと思う。確かに「好調」なのだが、あまりにもエンジンが高速でぶんまわっているような状況でギシギシとノイズを立てながらハンドルが右に左にといった状況なのだ。

必死にこれを制御しようとしている人はいる。だがトランプ大統領はこうした人々を敵視し「解任するぞ」と息巻いているのだった。資本主義がこれで終わるとは思わないが、少なくともアメリカの資本主義は重大な局面に差し掛かっている。