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そもそも、今回の戦争の内容とトランプ大統領の狙いはなにか(1/3)

8〜12分

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まず定義から入る必要がある。今回、トランプ大統領が戦っている「戦争」とは何か。それは単にイランとの軍事衝突ではなく、敵を設定し支持者を結束させるための政治的な戦いである。言い換えれば、「戦争に勝ってしまうこと」が問題になることさえあり得る。

トランプ大統領が「発電施設を攻撃する」と示唆した際、株価は大きく下落し、原油価格は上昇した。その後、「イランとの交渉が始まっており、イランはアメリカの要求を受け入れる用意がある」と述べたうえで、攻撃を5日間延期している。更にイスラエルメディアは戦争終結期限が4月9日に設定されたとしている。

たしかに、トルコ、エジプト、パキスタンがアラグチ外務大臣と接触しており、イラン側に何らかの交渉ルートが存在すること自体は事実である。ただし、アラグチ外務大臣がどの程度実権を持っているかは不透明だ。また、ウィトコフ特使との接触はそれとは別のラインで進んでいるとされる。さらに、イラン政府は「アメリカと交渉している事実はない」と明確に否定している。

したがって、トランプ大統領が言う「交渉」が、どのレベルで実在しているのかは確認が難しい。あるいは彼の頭の中にしかないのかもしれない。つまり彼はファンタジーを語っている。いずれにせよ、双方が合意した公式な交渉が進んでいる状況ではない。

これと並行して、トランプ大統領はSAVEアメリカ法の制定を議会共和党に強く求めている。これは連邦政府が選挙に関与する枠組みを整備する意味合いを持つが、民主党の反対はほぼ確実視されている。

この2つの動きは一見無関係に見えるが、実際には一定の整合性を持っている。SAVEアメリカ法が否決されれば、「選挙は不正に操作されているのではないか」という主張を支持者に訴えやすくなる。同様に、イラン政策についても「本来は完全な勝利が可能だったが、国内の政治的妨害によって実現できなかった」という構図を作ることができる。

つまり、対外政策と国内政治は切り離されているのではなく、むしろ同じ物語の中で接続されている。つまりトランプ大統領のファンタジー世界では完璧な構図ができているのだ。

この観点から見れば、トランプ大統領が主に戦っている相手はイランや世界経済ではなく、「選挙」そのものだと言える。目的は、「強い敵に立ち向かう指導者であるにもかかわらず、国内の妨害によって成果が制限されている」という認識を支持者に共有させることにある。そもそも成果が出せないトランプ大統領は「彼の世界の中」で勝利し続けるしかない。負けを認めない限り彼は勝ち続ける。少なくとも彼の頭の中では……

したがって、無制限の破壊や全面戦争が志向されているわけではない。実際、金融市場が大きく動揺した場合には強硬姿勢を修正する傾向が見られ、いわゆるTACO(Trump always chickens out)的な行動パターンも観察される。

さらに制度的な制約も存在する。60日を過ぎると、大統領の単独で取り得る軍事行動の幅は徐々に狭まる。オバマ政権期には「地上部隊を投入しない限り戦争とは見なさない」という運用が事実上の前例となっており、今回も同様の枠内で行動が制限される可能性が高い。

議会は追加予算の承認ではまとまりにくく、一方で大統領の行動を完全に封じることも難しい。この「どちらにも振り切れない状態」が続く中で、最終的にはミサイルなどの実行手段の制約が現実的な上限となり、誰かがトランプ大統領に「負けを認めさせようとしない限り」戦争は自然に収束へ向かうと考えられる。

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