9,100人と考えAIとも議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方


このまま過半数を取れる政党が出ない場合、どうなるのか?

7〜11分

イイネと思ったら、Xでこの投稿をシェアしてください

本日は「このまま過半数を取れる政党が出ない場合どうなるのか」について考える。比較第一党の党首が首班に指名されるのだがおそらく読者が知りたいのはそんなことではなく「日本がどうなるのか」だろう。

シナリオは無数に存在するため外国の事例を合わせて考えた上で、今日本がどうなっているかについて分析するところまで持ってゆきたい。

現在日本には過半数が取れる政党がない。公明党が政権を離脱したことで自民党の立場は更に弱まった。マスメディアはこのまま日本が弱体化してしまうのではないかと心配しているようだ。

結論だけを書くとおそらく高市早苗氏は総理大臣になれる。だが「何も決められない」総理大臣になり、財政の責任だけを押し付けられるだろう。ガバナンスの面でも同様。企業献金に依存する地方議員の造反を恐れ政治とカネの問題の矢面に立たされ続けることになる。ここで問題になっているのは政治が問題解決をしてこなかったツケを今後は総理大臣が精算させられるという「不利益分配」である。

では外国ではどうなっているのか。まずアメリカ合衆国の事例を検討したい。民主党・共和党の二大政党制が崩れたが全国的な政党を作るために巨額な資金が必要になるためそれに変わる政党は現れなかった。代わりに共和党がMAGAに簒奪される。現在トランプ大統領は予算合意が得られておらず責任を問われる立場だが「全ては民主党がやったことである」として更にリストラを進めている。

次にフランスについて検討する。フランスには共和党・社会党という二大政党があったが改革に失敗した。人々は改革者マクロンに期待するのだが彼も所詮はエリートの一人に過ぎなかった。国民はマクロン大統領に反発するがすでに二大政党が崩れているため極左と極右に期待するようになった。結果的に現在のフランスは右派、左派、改革派という三極構造になっている。

彼らは過半数は取れないが敵対勢力と組めば与党を潰すことができる。このため不信任の無限ループが生まれ新年度予算の成立が絶望視されている。マクロン大統領は選挙を通じて状況をリセットしようとしたがリセットに失敗している。

つまり今後総選挙が行われたとしても極右・極左の勢力が拡大するものの議会を支配できる政党が現れない可能性が高い。

アメリカ合衆国とフランスはどちらも政府の財政削減という共通の課題を抱えている。既存政党はこの問題を解決できなかった。しかしアメリカ合衆国では新しい政党が出現しないため二大政党制度を形式的に維持したまま政治的内戦に突入した。一方で政党を作るのが容易なフランスでは多極化が進行してている。決定的に議会を支配できる政党は現れず予算審議が膠着状態に陥った。

では日本はどうなるのか。

小選挙区主体の制度である点はアメリカ合衆国やフランスに似ている。政党を作るのは比較的簡単なためフランスのような多極化が進む。ただし表立った対立を好まない傾向がある。

おそらくそれぞれの政党は「少子高齢化は不可避であり痛みを伴った改革は避けられない」とわかっているがそれが有権者に不評であるということも知っている。となると最も賢い選択は責任を取らずに誰かに押し付けることである。形式上は高市早苗自民党総裁に最も可能性が高いため、総理大臣がその責任を押し付けられることになる。

これ前で日本の政治は属人的な人間関係に基づいた(橋下徹氏の表現では「永田町流飲み食い政治」)貸し借りの関係に基づいた利益分配型の政治を行ってきたわけだが、これが裏返り「不利益分配型の政治」に移行しようとしているということがわかる。

つまり心配しなくても高市早苗総裁は次の総理大臣になれる。ただし高市総理が政策を実現するためには野党との協力が必要。野党は財源などの不利益問題を自民党に押し付けるようになるだろう。

今回、税制調査会長から逃げた宮沢洋一氏は「ラスボス」と言われて嫌われていたがあえて嫌われ者を買って出ていたようなところがある。しかし地元で「ラスボスの息子は応援できない」と言われ気持ちが折れてしまったようだ。

小泉純一郎氏は小泉進次郎氏が総理大臣になるのはまだ早いと主張していた。政界と政治状況を俯瞰してみるだけの能力はまだ衰えていないようである。