小泉進次郎大臣が山梨県山梨市で選挙演説を行い「外国勢力が過激な主張を広め自民党を貶めようとしている」と主張した。各地で逆風を感じる中でついに陰謀論を広めるところまで追い詰められたかと感じた。
今回、外国人問題が急浮上した背景は有権者のうっすらとした不満だろう。Bloombergのコラムは日本の移民問題は今ここにある危機ではなく単なる不満の受け皿であろうと指摘している。極端な右傾化を気にしている人もいるのだろうが、日本のいわゆる「外国人問題」の程度は欧米のそれとは比べ物にならない。
自民党は無党派を顧みてこなかった。選挙至上主義に陥いるばかりではなく、成果を挙げられない中で目的意識が希薄になっている。それが可視化されたのが鶴保庸介発言だった。
鶴保氏は「地震は幸運だった」と主張した。確かに鶴保氏の政策遂行にはプラスだったが被災者や災害を恐れる国民の気持ちもはや自民党議員には見えていないことも可視化された。鶴保氏はヘラヘラと笑いながら釈明会見を行い参議院予算委員長の椅子を失った。
有権者はこうした薄っすらとした疑念を言語化出来ていない。外国人というわかりやすい敵が設定されたため一部が飛びついたものと考えられる。しかし自民党はそもそも安倍総理が右傾化した保守に流れがちな人たちを繋ぎ止めてきた。石破総理ではこの人たちを繋ぎ止めておくことは出来ない。誰か代わりになる人が必要だ。
確かに一部の人々は声高に外国人が優遇されていると主張している。しかし彼らは個人では発言ができず徒党を組んでお互いに承認し合うという特性がある。情報バブルの中に閉じこもっているだけとする人もいるがむしろ彼らの承認欲求を崩さないためにはバブルの中に閉じこもるしかないのが実情。
しかしこうした彼らの実相は生のSNS言論に別け隔てなく触れてみないとわからない。
もちろんこれが問題にならないなどと主張するつもりはない。こうした言論はうっすらとした不満を持った普通の人たちに波及する可能性がある。当初安倍晋三氏に同調したのはおそらく一部の雑誌保守だったのだろうがこれが中高年・高齢者に波及して初めて政局に影響を与えることになった。
メディアによる極端なDemonize(悪魔化)は危険だ。事情を確かめようと集まってきた普通の人たちが「メディアが言っているほど悪い人たちでもなさそう」と同調してしまう可能性がある。
自民党は今こそ「自分たちは何が見えなくなっているのか」を内省しつつこれまで先延ばしにしてきた問題に対処しなければならない。しかし、小泉氏の発言を見ると一方的に被害者意識をつのらせ「外国勢力が自民党を追い落とそうとしている」という被害妄想に囚われてしまったようだ。
では小泉進次郎大臣は何を念頭に置いているのか。時事通信は何も書いていないが念頭にあるのは参政党ではないか。
参政党のある候補者がスプートニクのインタビューに答えた。スプートニクはロシア政府の見方を伝えるメディアだが日本では「ロシアのプロパガンダメディア」と受け止められているようだ。
参政党側は「末端の職員が勝手にやったことであって党本部は関与していない」としている。参政党が政局に影響を与えかねない政党として認知され始めたことがうかがえる。組織づくりが上手といわれてる参政党だが早くもガバナンスの問題に直面している。
時事通信は平デジタル大臣が小泉発言に同調していると思えるような書き方をしている。実際の会見を見てみたのだが「検証が必要」と言っているだけで外国勢力の介入について踏み込んだ発言は行っていないようだ。
検証が必要なのは確かだろう。ルーマニアのようにあからさまにロシアからの介入があった事例も存在する。
ルーマニアでは政治不安によって泡沫だった極右候補が急浮上した。どの程度ロシアからの介入があったのかについてはよくわからないままだったようだ。
- Romania’s presidential election redo is a high-stakes test of its democracy following annulled vote(AP)
- Russian interference claims hit Romania’s critical election on voting day(Politico)
ただしルーマニアはEUにとどまるか親ロシア勢力に転じるかという問題を抱えておりロシアにはルーマニアの大統領選に介入する強い動機があった。日本が日米同盟を放棄してロシアに接近する兆候はない。
確かに参政党は外国の勢力を日本国内に置かないという憲法草案を提示しているが、自民党に対する敵対的発言も見られない。むしろこぼれ落ちた安倍総理の「資産」をまとめて拾い上げ自民党に戻す働きがあるのではないかとも感じる。すでに自民党も公明党も外国人規制問題に踏み込んでおり差異はなくなりつつある。
なお小野寺五典政調会長からもこんな指摘が出ているそうだ。山本一郎さんの文章は確かになんとなく科学的っぽいのだがサイバーセキュリティの専門家がどう評価するかは未知数。小野寺さんもお疲れなのかもしれないが、今は平さんのように抑制的に対応したほうが良かったのではないかと感じる。平さんは東京が地元なので「選挙区事情に介入した」と取られかねない発言は控えたのではないか。
専門家のクロスチェックなしに不用意な発言をすれば「追い詰められて陰謀論に飛びついた」と言われかねない。
三原じゅん子大臣も外国の勢力からとほのめかしており自民党の中にSNSに対する被害者意識が広がっているようである。このまま敗北すれば外国勢力に煽られた無知な有権者が間違った意思決定をしたと主張しかねない。
